2013年5月9日木曜日

生活保護 最近のいくつかの出来事

先日日曜日深夜のNNNドキュメントは「生活保護 自立をめざして 釧路・豊中…先進自治体の挑戦」というものだった。

釧路ではケースワーカーが、豊中では就労支援コーディネーターが生活保護受給者を支援する活動を追った番組。
どちらも限られた予算の中で行政としてできることを精一杯やろうと努力している姿に好感が持てた。

どこかの自治体とは雲泥の差だ。

どこかの自治体の1つ、兵庫・小野市の条例についてはすでに本ブログで触れたが、それ以外に次に2つの件が前後してニュースになった。

1つは、埼玉・三郷市。

夫の白血病、妻の精神疾患で生活が立ちゆかなくなった家族が何度も市に生活保護の相談をしたのに、市は「就労」「身内からの援助」をくり返し、1年半も生活保護の申請さえさせなかった。
弁護士の援助で生活保護が受けられるようになったものの、2か月後には市の指導で東京都内へ転居させられ、さらに転居先で生活保護の相談に行かないように言われた。

この件は裁判になり、市の対応が違反だとして、さいたま地裁が市に賠償金の支払いを命じた。
2/24に判決が確定している。*さいたま新聞2013.2.21付

もう1つは、姫路市。

甲状腺疾患の治療のための通院費で生活が困窮を極めていた生活保護受給者の男性が「交通費を出してほしい」と訴えたのに、ケースワーカーが「生活費から出しなさい」とくり返した。
2007年の滝川氏の通院費不正受給事件の報道で、通院費が支給されることを男性が知ってしまったために、それ以後は支給されるようになった。

この件も裁判になり、3/22、神戸地裁は市に男性が負担した通院費と慰謝料の支払いを命じる判決を出した。*毎日新聞2013.3.22付

生活保護に対する風当たりがつよい中、原告の受給者敗訴であっても世間は不自然に思わなかったかもしれませんが、世間に阿(おもね)ることなく法に従って福祉事務所側の違法性を指摘した裁判所はさすが法の番人です。福祉事務所のケースワーカーも法律を尊重し適正な制度運用をすることを望みたいと思います。

上記のように記事を見事に結んでいるブログ「遥香の日記」を今回見つけて、世の中には立派な人がたくさんいるんだなと思ったしだい。


直近では、4/19、大阪地裁が自動車を持っていることを理由に生活保護を打ち切ったのは違法だと認定している。*産経ニュース2013.5.2

司法も釧路も豊中もがんばってくれているが、国はやはり生活保護基準引き下げを強行するのだろうか。

基準引き下げの主な根拠は物価の下落だ。

今日の赤旗には「データは語る」の欄に右のような表が載っていた。

総務省の調査をもとにしたもので、2010年~2012年の数字だ。

物価下落といったって、これが実態だ。
これを根拠に生活保護基準を引き下げるというのはあまりにもひどいではないか。

この引き下げに反対する自治体の議会意見書が各地で採択されている。

世の中悪い人ばかりではないのだ。
赤旗2013.5.1付


◆ シロバナマンテマ(ナデシコ科マンテマ属) ◆
シロバナマンテマ 2013.4.16撮影
前回のケナシマンテマ(イタリーマンテマ)の兄弟のような花だ。そもそもマンテマという不思議な名前だが、由来は不明だと手持ちの図鑑には書いてある。


赤旗 2013.5.5~5.8 日本の異常 生活保護

欧州の手厚い社会保障
子ども10人家族 英国手当1425万円

生活保護の利用者は若者が中心、お年寄りには年金が充実、生活保護を利用しなくても医療費は無料か低額、生活保護を受けたからといって自動車は手放さなくてよい…。日本と同じように発達した資本主義国であるイギリス、フランス、ドイツの社会保障の姿です。それと比べると、使いにくい生活保護をさらに切り下げようという日本の施策は、異常な貧しさです。(鎌塚由美


 個人をみた給付

 ある家庭が受け取った手当の総額は、年1425万円。

 2010年に訪れたイギリスの駅のキオスクで、三成一郎さんは新聞を手にとって驚きました。「こんなに手厚いとは」

 特集記事で紹介されていたのは、生活保護世帯の暮らしぶりでした。7人の子どもと無職の夫婦は年に約630万円、10人の子どもと無職の夫婦は年に約1425万円の手当を受けていました。


 日本でいう生活扶助費(所得補助)が高額なわけではありません。「生活全般の手当があいまってナショナルミニマム(国民最低限)を構成している」。社会保障総合研究センター事務局長を務める三成さんの見方です。

 イギリスには個人の必要に応じた給付があります。無収入・低所得者には「所得補助」、求職活動中なら「求職者給付」、傷病者・障害者や求職手当を受けていない人には「雇用・支援給付」。子どもの養育には「子ども手当」のほか、低所得層なら「児童税額控除」という給付金がつきます。

 英紙が紹介している子ども10人の家族にも、多くの手当が支給されていました。住宅と朝食の手当。児童税額控除。子ども手当。妻への障害者生活給付。その妻を介護する夫への介護者給付。そして所得補助です。

 批判にも堂々と

 子どもが多くなるほど手当が増えることから、当時の閣僚が「家族に責任を持て」などと批判し、物議をかもしていました。

 しかし、英紙の取材を受けた手当利用者は、「私が仕事をしていようがいまいが、子だくさんなんていわせない」(子7人の母親)と意気軒高です。手当を受け取るのは国民の権利だ、と堂々と主張しています。

生活保護 “仏ではバッシングあり得ない”

 英・仏・独 年金で人間らしい生活
 日本 増える高齢者の利用

 イギリス、フランス、ドイツで生活保護の主な利用者は「働ける年齢層」です。

 フランスの生活保護利用世帯で高齢世帯の占める割合は16%にすぎません(グラフ)。

ドイツの制度に詳しい大阪市立大学の木下秀雄教授によれば、ドイツでは「働ける年齢層」向けの生活保護(求職者基礎保障)利用者は600万人程度。65歳以上の高齢者と障害者を支援する制度の利用は100万人程度にとどまります。イギリスでも高齢者の生活保護利用はほとんどないといわれます。

 人間としての尊厳

 なぜ高齢者の利用が少ないのか。「年金や医療などの保障が手厚いからです」と専門家は口をそろえます。

 イギリスで永住権を取得し、家政婦などで働いて年金暮らしとなった高尾慶子さんは著書『イギリス ウフフの年金生活』(展望社)でロンドンでの年金暮らしを語っています。

 年金支給年齢になれば、光熱費は冬期に暖房手当(3万円=当時)が出る、交通費は無料、民間アパートの家賃の8割は国の住宅手当でまかなわれる。消費税は日本に比べて高いけれど、食料品にはかからない。映画館の割引もある。医療費は完全無料…。「贅沢(ぜいたく)はできなくとも、十分に人間としての尊厳を保って生活のできる(年金)額」だと高尾さんは述べます。

 ドイツも「老齢年金で生活できる仕組みを戦後の努力でつくっています。現役時代の生活の継続性を大事にするのが建前です」と木下教授はいいます。

 ドイツの年金財源は労使折半が基本ですが、収入のない人の保険料は国が負担。低年金者を生まない努力がされています。

 年金をもらうことになる退職時(退職年齢平均59歳)には、お祝いのカードを贈る習慣があるフランス。カードには「退職・自由・ルネサンス。君のためにすべてが再生する」などの言葉が並びます。

 「フランスでは、定年退職は喜びなんです。定年退職後の再就職なんて聞いたことがありません」。フランスの社会保障制度を長年研究してきた広島県立大学の都留民子教授は語ります。

 日本と同様に、医療保険制度を基礎とするフランスも医療費の窓口負担は原則ゼロ。ドイツも月1000円ほどの定額負担だけです。

 こうした社会保障の支えがあるため、高齢や病気になったからといって最低生活を割り込む人は多くありません。

 日本女性の低年金

 それに比べて日本はどうか。国民年金の満額は月6万5541円(2012年度)です。収入は国民
年金だけの高齢者も多く、女性の低年金は深刻です。厚労省の調査で、年金を受給する女性の65%が年収100万円以下。年収50万円(月約4万円)以下の人も3割近くいます。

 医療費の窓口負担は1~3割。介護保険サービスも1割の利用料を払わないと使えません。医療も介護も定率負担なので、高齢で身体が衰え病気がちになるほど負担は重くのしかかります。

 日本の全住宅に占める高齢者、低所得者向け公共住宅の割合は5%ほど。イギリス(21%)やフランス(18%)に遠く及びません。石原前都政から現都政までの14年間にわたり都営住宅は一棟も増築されていません。大阪府では橋下府政時代に府営住宅の半減が打ち出される逆行ぶりです。住宅手当も、イギリスでは全世帯の18%、フランスでは25%が受けています。

 日本で生活保護を利用する高齢者が増え続けるのは、年金、医療、介護、住宅などの保障があまりに貧困だからです。

 60歳以上伸び顕著

 日本では、生活保護利用世帯の44%を65歳以上の高齢世帯が占めます。2000年以来の年次推移をみても、60歳以上の高齢者の伸びが大きな特徴になっています。

 それにもかかわらず、政府は親族の扶養義務を強化することで、高齢者の生活保護利用を無理やり減らそうとしています。

 生活保護を受けようとする人の親族への扶養照会が行われる現在でさえ、「親族には知られたくない」と保護辞退者が出ています。厚労省が狙うように「扶養が困難な理由の証明」まで求めることになれば、「子どもに迷惑をかけたくない」と辞退者が続出することは必至です。

 他の社会保障が貧しい日本で生活保護を利用できないことは、命に直結する問題です。

 昨年春、芸能人の母親が生活保護を利用しているという報道が契機となって生活保護バッシング(たたき)に火がつきました。違法性はなかったにもかかわらず、息子の芸能人は謝罪に追い込まれる事態になりました。

 仏フィガロ紙の日本駐在記者、レジス・アルノー氏は、扶養をめぐる生活保護バッシングは「フランスではあり得ない」と書きました。「母親は失業して国に助けを求めた。息子は一生懸命働いて高い所得税を払っているのだから、政府の歳入の足しにさえなっている。息子がいくら成功していても、母親はできる限り政府の寛大さに甘えるべきだ―フランス人ならそう考える」(『ニューズウィーク』誌日本版のコラム、12年7月23日)

欧州 けた違いの利用率

日本で生活保護を利用する人(利用率)は、全人口の1.6%にすぎません。利用できるほど低所得なのに実際に生活保護を利用している人(捕捉率)は15~18%といわれます。

 一方、イギリスやフランスは捕捉率が90%にのぼります。利用率はイギリスは19%、フランスは9.8%です。ドイツでは捕捉率は65%、人口の9%が利用しています。

 使いやすい制度

 国民の10人に1人が生活保護を利用する欧州先進諸国。その背景には制度の使いやすさもあります。

 イギリスでは、生活保護を申請する場合でも預貯金は240万円まで許されています。フランスでは預貯金や資産の調査は行われず収入だけの調査です。

 申請の仕方も簡単です。イギリスの所得補助の場合、政府のホームページに紹介されている全国統一の電話番号に電話するか、政府のホームページからダウンロードした申請書を近所のジョブセンタープラス(職業安定所)に送付します。政府のホームページには、申請が却下された際の異議申し立ての仕方について説明がされています。

 ドイツの制度に詳しい大阪市立大学の木下秀雄教授は、ドイツの生活保護制度の特徴の一つとして「利用者の不服申立や訴訟の多さ」を上げます。一人ひとりが抱える困難の個別性を重視し、扶助の中身を客観的に決めるという考えに立っているといいます。

 不服申し立ては年間70万件、訴訟も年間16万件にものぼります。「額が少ない」「計算間違いだ」といった不服申し立ても多く、行政の対応に納得がいかなければ訴訟を起こせます。費用もかからず、簡易に訴訟ができる仕組みです。

 「個々の担当者や福祉事務所の主観的判断で生活保護を支給しないようなことが日本ではありますが、ドイツでは許されません。行政側も丁寧にやらないと裁判で負けるという構えで仕事をしています」と木下教授はいいます。

 「水際作戦」横行

 日本ではどうでしょうか。原則として車の保有が許されず、財産の処分を迫られ、所持金がわずかになってやっと利用の申請ができます。福祉事務所に申請に行ってもあれこれ理由をつけて追い返す「水際作戦」が横行してきました。

 制度の異常な使いにくさが、日本の生活保護利用率と捕捉率の低さの要因となっています。

劣悪労働 広げない欧州

 日本の異常の一つに、若者の生活保護利用率の低さもあります。

 利用率10%未満

 「働ける年齢層」の利用が増えたと政府は問題視しますが、2008年のリーマン・ショック後に派遣切りが問題になってようやく利用が認められはじめたものです。20~30代の利用は10%にも及びません。

 フランスでは、税金による公的扶助の利用世帯で一番多いのは、失業扶助の要件に当てはまらない「働ける年齢層」を対象にした「積極的連帯手当」(エレサ)です。利用世帯全体の42%を占めます。若い失業者が親と同居していても利用できます。

 エレサと失業扶助をあわせると、公的扶助利用世帯の55%にのぼります。広島県立大学の都留
民子教授は、「利用者の過半数が元気な人たち」であることがフランスの公的扶助の特徴だと指摘します。

 失業や就職難などで困る若い世代の生活を公的に支える制度が整えられているのです。

 各国は就労支援も丁寧に行っています。

 イギリスの「雇用・支援給付」には、積極的に求職活動を行う場合は手当が増額される仕組みがあります。一方で病気などの支障がある人には求職活動の勧奨はありません。

 ケースワーカーも手厚く配置されています。社会保障総合研究センターの光成一郎事務局長は、10年にイギリスのジョブセンタープラス(職業安定所)を視察しました。「リーマン・ショック後に6千人の職員を増やした。1対1で就職支援に対応した」と説明を受けました。

 フランスのエレサには、就労すれば手当が増える仕組みがあります。しかし就労手当の利用者は増えていません。なぜか。

 「フランスでは、まともな仕事がないときに、『仕事に就け』とケースワーカーが強要することはできません。ひどい仕事に就かせない原則があるからです。結局、扶助利用者は増えていくのです」と都留教授は説明します。

 ひるがえって日本の厚労省はどうでしょう。働ける年齢層の生活保護利用者に対し、「就労・自立支援のインセンティブ強化」を名目に“とにかく働け”と低賃金・劣悪労働を押しつける構えです。保護開始から6カ月をめどに「集中的に就労支援」をし、「5万円程度の収入でもまずは就労」「職種や地域などを拡大して就労活動を行うことを明確化」するとしています。

 全国民に恩恵を

 大阪市立大学の木下秀雄教授は警告します。「労働条件をさらに劣悪化させれば、体を壊して仕事を失う人が増え、年金もないまま高齢になる人が増えるだけです。そうなれば生活保護利用者が増えざるを得ない」。ドイツでは「若者に対しても、すぐに就労につながらない場合でも手厚く丁寧に就労支援をしている」と話します。

 欧州先進諸国では、医療費ゼロ、所得制限なしの教育費無償など、国民のだれもが社会保障の恩恵を受けています。このことが国民同士を分断し対立させて、個々の制度を改悪していく策動を困難にしています。

 「時の政権による攻撃があっても、最低生活保障という制度の根幹は揺るがせないのだという国民の力を感じた」と光成さん。都留教授は「生活保護バッシングを許さないためにも、国民各層の連帯したたたかいで、全国民を対象にした社会保障を構築することが不可欠です」と強調します。

1 件のコメント:

  1. 生活保護の問題点は、現金支給(税金ですし、年間に兆の単位のお金が必要です)にあると思っています。貴重な税金が受給者の生活に使用されるのではなくて、ギャンブル・嗜好品・他への流用等が疑はれるからですね。受給者は医療費は免除・他に特権が付随されていて、働かなくても一生、レベルが低いですが安心して自由に生活して下さいねとの制度です。私の考えです。現金配布は止めて、生活保護が困難で申請されたら、国が建てたテレビありの住まいに入り、病院(入院可能、生活カウンセラー)、食堂(三食提供)、軽作業場(働けば現金収入を得て、新たな生活の種とする)、職業訓練(就職の援助)などがセットになった設備を作るべきですね。ここが良ければ、一生住んでも良いし、自立して出たければ出ても良いし、申請すれば一時的に国が保護するけど、判断は個人の自由です。こうすれば、不正な人は出ないし、公正だと思いますね。

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