2013年5月5日日曜日

「こどもの日」にイタリア映画「鉄道員」を観る

「こどもの日」にふさわしいものを何か書きたいなと思ったところ、映画「鉄道員」が思い起こされた。
1956年に制作されたピエトロ・ジェルミ監督・主演のイタリア映画だ。


この映画は去年の7月にNHK・BSプレミアムで観た。
いい映画だと思い、★が3つついている(観賞後の自己評価)。

今年の1月に再放送があったとき、2回目を観て、1回目よりも感動して★4つになっている。

allcinemaというサイトに載っていた解説を引用する。

 第2次世界大戦後のイタリアに生きる庶民の人生の歓びや哀しみを、ある一人の初老の鉄道機関士の姿を通して描いた、映画史に残る感動作。50歳のクリスマスを迎えたイタリアの鉄道機関士アンドレア・マルコッチは、末っ子のサンドロから英雄のように慕われていたが、長女のジュリアと長男のマルチェロからは、その厳格さや律儀で一徹な態度から敬遠されていた。しかしそんな彼らもやさしく献身的な母サーラがいるおかげで毎日平穏に暮らしていた。そんなある日、娘の流産や息子の不良化に気を病んでいたアンドレアが列車を運転していた所、彼の前に一人の若者が身を投げた。急いでブレーキをかけたアンドレアだったが、間に合わずにその青年を轢いてしまう……。いたいけな少年サンドロの純真な眼を通して、親子の愛情や夫婦の愛、そしてイタリアの地に生きる庶民たちの喜怒哀楽を、全編に流れる温かい人間愛で描いた映画史に残る名編。

引用ここまで――

マルコッチ家の夫アンドレア、妻サラ、長男マルチェロ、長女ジュリア、次男サンドリーノの5人家族の物語だ。
末っ子の小学校3年生ぐらいの男の子アンドレアの目を通して物語は展開していく。

この5人家族のそれぞれの関わり合い、喜怒哀楽というものはまさに庶民的といえるものだが、それにしてもそれぞれのシーンがすべて胸を打つ。
なかでも、この家族が末っ子のサンドリーノにそそぐ愛情の深さはどうだろう。
 
「山田洋次が選んだ日本の名作100本」を観ていた期間で、あまりにも日本映画のつまらなさに辟易していたものだから、よけいこの「鉄道員」が心に残っていたのだ。

そこで、「こどもの日」にちなんで映画「鉄道員」を3たび観ることにした。
この映画はDVDにダビングして残しているのだ。
同じ映画を短期間に3度も観るのは「オペラ座の怪人」以来だ。

今回はじゅうぶん筋がわかった上で観ている。
退屈してしまうかなと思ったが、逆である。
1つ1つのシーンを100%以上味わえるからだろうか、感動がより深いのだ。

子役がうまい、ジュリアがとても美しい、父・母、すべてがどうしてこのように自然に演技ができるのだろうか(サイトには不自然という指摘もあるが)。

サラが成績の良くない通知表を見せられてサンドリーノをたたこうとする。
サンドリーノがきわどいところでよける。
感動する場面ではないが、こんなユーモアあふれるシーンにも家族の愛を感じて心あたたまる。

後半ではアンドレアがかなり本気でサンドリーノを殴ろうとするが、ここでもサンドリーノはかわしてしまう。
日本映画によくある笑わせようとする露骨な演出ではないので、ストレートに心がほっこりとなる。

マルチェロがふざけて母を抱きしめて振り回す。
サラがごまかさないでと叱るが、こんなシーンにどうして胸が熱くなるのだろう。

酒場でくだを巻く父を母が迎えに来ても動こうとしないが、サンドリーノが迎えにくると手をつないで家に帰る。
父と子が手をつないでいるだけで心が安らぐ。

こんな調子で最初から最後まで涙腺がゆるみっぱなし。
すべてのシーンを書くわけにはいかないが、もう少し。

大人たちの愛憎、裏切りなどをサンドリーノは子どもの目で見つめていく。
大人は「これは秘密よ」と言って、サンドリーノに約束させる。

サンドリーノは絶妙のタイミングで秘密を守ったりばらしたりする。
映画のナレーションもサンドリーノの語りなのだ。
まさに子どもが主役の大人の映画だ。

サンドリーノとジュリア
親が子に示す愛情だけでなく、年の離れた兄姉のサンドリーノに示す愛情がこれまた泣かせる。
ジュリアがサンドリーノに抱きつき、手をつないで通りを走るシーンは、本当に単純なシーンなのだが、その映像美とともに、はかりしれない愛情の深さを感じさせて、胸がふるえる。

家族だけでなく、父の友人たちのサンドリーノを見守る暖かさはどうだろう。
この映画は一家5人のそれぞれの愛情物語であり、はたらく仲間たちの愛情物語でもあるのだが、やはり、子どもへの愛を最も強く感じさせる映画だ。

結末は悲劇的要素がふくまれているが、それでもハッピーエンドなのだ。
ハッピーエンドというのは映画のとても大切な要素だと思う。

というわけで、3回目を見終わったときには★5つの評価になってしまった。
なんせ、このブログを書いている間じゅう胸がつまり、目頭の奥が痛みっぱなし。
こんな映画めったにないと思う。

最後に余談だが。

マルコッチ一家は鉄道員ということで、典型的な労働者、庶民だ。
それなのに、映画の最後の場面では、マルコッチの家に子どもを含めて30人ぐらいの人が集まり、踊ったりのパーティーが開かれる。
これがイタリアの平均的な庶民の家なのだろうか?
私の家など…


◆ オヘビイチゴ(バラ科キジムシロ属) ◆
オヘビイチゴ 2013.4.16撮影
前回のムラサキサギゴケと混生しているよく目立つ黄色い花。花だけを見るとヘビイチゴだと思うのだが、葉のようすがちがうみたい。かなり念入りに調べてみて、どうもオヘビイチゴという初めて聞く名の花のようだ。ふつうイチゴの葉は三つ葉だがこれは5つ葉。赤い実はできないらしい。

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