21世紀のこの世界で、なぜこのような国が存在できているのか不思議でしようがない。
核実験については地球上から核兵器をなくすという人類の悲願に挑戦しているわけで、ゆるすことはできない。
もちろんアメリカのオバマ政権のもとでくり返される臨界内核実験もどうようだ。
ここでは核実験ではなく、昨年末に行われた北朝鮮のロケット発射の話題だ。
書こう書こうと思いながら今日まできてしまった。
昨年の4月に行われたロケット発射でもそうだったが、NHKはこのニュースを伝えるとき必ず「事実上のミサイル発射」という表現をした。
それはくどいほどで、なぜそこまでいうかとあきれるほどだった。
その背景には日本政府が「事実上のミサイル」と断定したからであり、政府の広報機関たるNHKとしては当然のことだったのだろう。
他の報道機関はどのように表現していたのか知らないのだが、赤旗は当初から一貫して「『ロケット』発射」といい、「事実上のミサイル」云々とはいっていない。
赤旗2012.12.13付 レイアウトは変えた |
つい先日(2/9)行われた共産党の中央委員会では、志位委員長は幹部会報告の中で「北朝鮮は、昨年4月、12月と、2度にわたって、国際社会の批判と反対を無視し、『ロケット』発射をおこないました」といっている。
ただしいつもロケットにカギ括弧がついている。
政府とNHKは「ミサイル発射」といい、共産党は「ロケット発射」という。
私はここに政府及びマスコミ(NHKだけ?)が国民の科学的無知に乗じて世論を政権の都合のいい方向へ誘導しようとする強い意図を感じる。
もちろん共産党の表現が科学的であり、事実に即した報道なのだ。
そのことを若干考察してみたい。
まずミサイルとは何か。
Wikipediaには「軍事兵器の一つであり、弾頭を搭載しなんらかの誘導に従って自ら目標を攻撃する飛行装置」とある。
弾頭(ようするに爆弾)を搭載しているかどうかが問題なのだ。
この時点で「事実上のミサイル」という表現はあやまっている。
北朝鮮のロケットは弾頭は積んでいない。
事実としてミサイルではないのに「事実上のミサイル」としつこくくり返したNHKは報道機関としての倫理を放棄しているようなものだ。
では北朝鮮のロケットは何を積んでいたのか。
本当に人工衛星を積んでいて、しかもその人工衛星を軌道に乗せることに成功したのだ。
北朝鮮は世界で10番目の自力で人工衛星を軌道に乗せることができる国になった。
このことは北朝鮮の政権に自信をもたらせただろうし、国家の威信は上がり、きっと国民も心から喜んだにちがいない。
その人工衛星がひじょうにチャチなもので使い物にならないとしても。
このあたりのくわしいことはやはりWikipediaの「光明星3号2号機」の項に書いてある。
多くの人はロケット、ミサイル、人工衛星といったものをごちゃ混ぜに理解している。
ミサイルであろうが人工衛星であろうが、それを飛ばすのがロケットだ。
人工衛星を打ち上げるためにはロケットが必要だし、同じロケットに人工衛星のかわりに弾頭を積めば弾道ミサイルになる。
だから人工衛星の打ち上げに成功したということは、弾道ミサイルの開発に大きく前進したということになる。
しかし、あのロケットは将来ミサイルになるとしても、この発射の時点では事実としてミサイルではないのだ。
北朝鮮はこのロケット発射にさいして、国際機関に打ち上げ予告、飛行経路、ロケットの落下予測海域などを事前通告している。
そしてほぼその通りにことは進んだ。
北朝鮮は人工衛星打ち上げに関してどこからも批判されないような手をそれなりに打っているのだ。
ロケットは、人工衛星なり弾頭を軌道に乗せるのが役割で、その役割を果たせば落下するようになっている。
日本も含めて人工衛星を打ち上げる国のロケットはすべて北朝鮮と同じで地球に落ちている。
このあたりまえのことさえ知らない人が多い。
日本政府はロケットが落ちて来るというあたりまえのことを大騒ぎして、国民を不安にさせた。
もちろんNHKなどのマスコミがきちんと報道すればいいのだが、これがまた政府いいなりだ。
このロケット打ち上げに関してだけならば、日本に危険は100%ないといっていいだろう。
まず、弾頭を積んでいないのだ。
さらにロケットの部品が落ちてくるといっても、事前通告のロケット軌道を見れば何の心配があるだろう。
ロケットの本体および部品が南西諸島のどこかの有人の島に落ちてくる可能性より、オスプレイが落ちてくる確率の方がよほど高い。
日本政府、そしてその広報機関のNHKは「事実上のミサイル発射」とくり返し、ロケットの部品が落ちてくるとして国民を不安にさせた。
そのねらいははっきりしている。
北朝鮮の脅威をあおり、国防意識を高め、自衛隊の軍備を増強するためだ。
いま朝日新聞のデジタルを開いてみると次のような記事があった。
2012.12.7 北朝鮮ミサイル、自衛隊に破壊命令 安保会議で決定
北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射予告に対し、野田内閣は7日午前に安全保障会議(議長・野田佳彦首相)を開き、ミサイルが国内に落ちる恐れがあるとして破壊措置命令を出すことを決定。これを受け、森本敏防衛相は自衛隊に破壊措置命令を出した。
…
破壊措置命令の期間は22日まで。地対空誘導弾PAC3を沖縄本島、宮古、石垣両島に、イージス艦を日本海と沖縄周辺の東シナ海に配備。万一の落下による被害に備え陸上自衛隊を先島諸島(宮古、石垣、多良間、与那国)に送り、PAC3は首都圏にも置く。
ちょっと驚いたのは、朝日新聞でさえ「北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射予告」という表現をしていることだ。
これはNHKの「事実上のミサイル発射」よりひどいのではないか。
それはさておき、この日本政府のはしゃぎようはどうだ。
こっけいといってもいい。
たとえロケット部品が落ちてくるとしても、射程20㎞程度のPAC3がそれにあたるのか。
あたったらそれで落ちてくるものが落ちてこなくなるのか。
破壊によって逆に落ちてくるものが広範囲に広がって危険が増すのではないか。
首都圏にまでPAC3配備など、悪のりもほどが過ぎる。
そもそも他国の人工衛星打ち上げで「破壊措置命令」なんてマンガの世界だ。
もうじきオスプレイが訓練のため日本国中を飛び回ろうとしている。
落ちるおそれがあるから防衛大臣は「破壊措置命令」をだしてほしい。
PAC3もオスプレイになら必ずあたるだろう。
それでもかなりの国民がこの破壊措置命令を支持したのだろう。
なんせミサイルが落ちてくるかもしれないのだから。
よくここまで国民をだませるものだと思う。
日本政府のいうがままの報道をするマスコミはマスゴミといわれてもしょうがないだろう。
さて、最後に言っておかなければいけないことは、この北朝鮮のロケット発射は非難されて当然のことなのだ。
それはこのロケット打ち上げが事実上の核弾道ミサイル発射実験であり、安保理決議1718(2006年)と1874(2009年)に違反するからだ。
安保理決議1718は、北朝鮮がノドンやテポドンの弾道ミサイル発射実験をくり返し、2006年10月に初の核実験を強行したことに対して決議された。
安保理決議1874は、2009年に北朝鮮がまたテポドンの発射実験を行い、さらに2回目の核実験を実施したことに対して決議された。
決議1874は、北朝鮮に対し、「いかなる核実験または弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求」し、「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止」することを求めている。
今回のロケット発射はミサイルではなく、実際に人工衛星を軌道に投入したわけだが、この成功は、弾道ミサイルの開発に大きな成果を出したことと100%同じだ。
つまり、北朝鮮の場合は、ロケット発射が核弾道ミサイル開発に直接結びついていて、過去も現在も事態は現実にそのように進み、そのことを北朝鮮も隠そうとはしていない。
だから安保理も非難決議をするのだ。
NHKも「事実上の弾道ミサイル発射実験」といってくれれば正確だったのだが。
◆ 南イタリアシリーズ⑭ ブタナ(キク科エゾコウゾリナ属) ◆
ブタナ 2012.12.29撮影 シチリア島 |
同上 |
追記 2013.2.17
今朝サンデーモーニングを見ていたら、北朝鮮の3回目の核実験のところで、キャスターが昨年末に行われたロケット発射のことを「事実上の弾道ミサイル発射実験」と正しくいったので驚いた。
サンデーモーニングがリアルタイムでどのようにいっていたのかは覚えていない。
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