2013年2月5日火曜日

柔道界の暴力 「日本の誇りある伝統武道」の実態

女子柔道代表監督園田隆二の暴力(体罰?)がセンセーショナルに報道された。
1/21の赤旗では和泉民郎という人が囲み記事の中で次のように言っている(抜粋)。

 残念ながら柔道界の指導者による体罰や暴力は、日常茶飯事といっていい状況です。
 ある女子のメダリストはこう話していたことがあります。子ども時代からの厳しい練習と体罰で、「柔道をやめたいと思ったのは、1度や2度ではなかった」と。

 北京五輪金メダリストの石井慧選手が、ある大会後、当時の全日本監督から平手で殴られる場面が、テレビで流されたこともありました。
 2009年までの27年間で110人もの子どもが命を落としている、異常に多い柔道事故のうち、しごきや体罰、暴力と結びついたものも少なくないとの報告があります。

その記事のとなりにはバルセロナ五輪金メダリストのコメント。

赤旗2013.1.21付 レイアウト変更
要するに柔道界では暴力は日常茶飯事で、それがあたりまえということだ。
全日本柔道連盟(全柔連)の対応を見ていてもそのことがよくわかる。
もっといえば、暴力容認はスポーツ界全般における常識といえるのではないかということが日本オリンピック委員会(JOC)の対応からも推測できる。

15人の告発した女子選手の勇気と、大阪桜宮高校体罰自殺事件という外圧によって今回の件は公になったと思われる。
全柔連やJOCの自浄能力などはなからないのだ。

昨年のロンドンオリンピックの柔道は、男女合わせても金メダルが1つしかとれなくて歴史的大敗などといわれた。
私などはどんな結果になろうと選手が精一杯やったのであればそれでいいじゃないかという主義なので、3位決定戦でも負けてしまった福見友子などかわいそうで泣けてしまった。

それにしても男子選手の負けたときの悲しみ方は異常だった。
あれほど大の男が負けて大泣きするとは。

私は男子監督の篠原信一にかなりの不信感を持っていた。
オリンピック前の何かの大会で選手の成績が思わしくなく、それに対して篠原監督がインタビューで選手を罵倒をした。
指導者として失格だなと強く思った。

オリンピック開催中も、篠原はいつも苦虫をかみつぶしたような顔で試合を見ていた。
選手にかかるプレッシャーはオリンピックという大舞台で背負う以上に大きなものがありそうだった。

そんなとき、赤旗スポーツ面に小さなコラムが載った。

赤旗2012.8.2付
私の感じていたことをずばりと書いてくれてうれしかった。
しかしだ!
このコラムでは篠原と比較する形で園田をほめている!

私自身はその当時は園田についての認識はなかったといっていい。
赤旗コラムを見て園田ってやつはいいやつだなと思っていた。
このコラムを書いた記者も忸怩たる思いをしていることだろう。

ロンドンオリンピックが終わって少し立ったころ内柴正人の柔道部員少女暴行事件が発覚した。
オリンピック2連覇という輝かしい記録を残し、現役の大学のコーチであり、名前まで「正しい人」である内柴が教え子の少女に性的暴行をした。
衝撃的事件だ。

この事件の東京地裁判決が2/1に出たばかり。
求刑通りの懲役5年。
しかも実刑!(執行猶予がない)
内柴は即日控訴したので刑は確定していない。

男子監督の篠原を嫌悪し、内柴の事件に暗澹となり、今回の園田の件だ。
これが「日本の誇りある武道」の実態だ。

中学校では今年度から武道必修化が始まった。
ことの始まりは2006年に教育基本法が自公政権下で改悪され、教育の目標に「伝統と文化を尊重し、それを育んできた我が国と郷土を愛する…態度を養う」ことを掲げたことからだ。
それを受けて文部省は2008年に中学校の学習指導要領を改訂し、体育の授業に武道・ダンスを取り入れ、武道については柔道、剣道、相撲の中から1つを選び、1・2年は必修、3年は球技との選択とした。
そして2012年4月から実施となった。

冒頭の赤旗記事にもあったが、名古屋大学の内田良准教授の調査によれば、学校管理下における柔道では、過去28年間で114人が死亡し、275人が重い障害を負う事故があった。
中学校部活動における死亡確率は柔道が飛び抜けて高いのだ。

なぜこのようなことが起こるかについては2つのことが指摘されている。

1つは「加速損傷」と呼ばれる頭部の損傷についての認識を指導者が持っていなく、起きた場合の対処法も知らないというということ。

もう1つが今問題にもなっている指導や練習という名の下でまかり通ってきた体罰やしごき、いじめだ。

私の息子も昨年の4月に中学2年生になり、この柔道必修化に遭遇した。
ほとんどの学校が柔道、剣道、相撲の中から柔道を選んでいる。

まず4月の家庭訪問で来訪された担任に認識をたずねる。
担任はそもそもこの武道必修化とその問題点に対しての認識はゼロだった。
簡単にご説明申し上げて管理職の方へ善処してもらうようお願いした。

私は参加しなかったのだが、PTA総会において校長はこの件に触れ、安全第1で取り組むことを明言された。
具体的には受身までの指導で、技の指導などはしないということだ。
これはこれで生徒はちっともおもしろくないだろうなと思う。

ところで2006年の教育基本法改悪時の首相は安倍晋三だ。
「戦後レジームからの脱却」「美しい国日本」をスローガンに、戦後はじめて教育基本法に手をつけた。
「伝統と文化を尊重し、国と郷土を愛する態度」を養うための武道必修だ。
その具体例が柔道、剣道、相撲なのだが、柔道と相撲の伝統と文化は目も当てられないひどいものだということが明らかになった。

実は私は高校生のとき半年ぐらい柔道部に所属していたことがある。
暴力とかいじめとかは無縁で、楽しい思い出だけが残っている。

柔道が悪いわけではない。
そこに脈々と流れている日本独特の封建的で陰湿な体質が問題なのだ。
そして、日本の保守本流の体質がそれに合致している。
安倍などその筆頭といっていいのかも知れない。

冒頭で紹介した溝口紀子が言っているが、柔道のすばらしさは外国で体現されている。
特にフランスの取り組みは日本の対極にあるといえる。

フランスでは学校管理下のみならず、そこらじゅうにある民間の道場においても重大事故は皆無に近い。
それは指導者の育成(国家試験)と体罰は暴力で即刑事事件というあたりまえの市民感覚にある。

ちょっと論が展開しすぎて疲れてきたので、中途半端だが今回はこの辺で終わりにする。

◆ 南イタリアシリーズ⑧ ニワトリ(キジ科ヤケイ属) ◆
風見鶏 2012.12.28撮影 アルベロベッロ
煙突の先についた風見鶏で煙の出口が回転し、常に煙を風下に流すようにしているみたいだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿