気にはなっていたが、堅そうな番組みたいで敬遠していた。
ところが知人が強くすすめるものだから、第4回から録画だけしておいた。
そのまま放っておいたのだが、つい先日第4回の「非戦と平等を求めて~幸徳秋水と堺利彦」を視聴した。
NHKならではのいい番組だ。
幸徳秋水と堺利彦を積極的に評価している。
しかし私が注目したのはこの番組の案内役をつとめたクリスチーヌ・レヴィというフランスの歴史学者だ。
流暢な日本語をしゃべり、幸徳秋水の「廿世紀之怪物 帝国主義」をフランス語に翻訳・出版している。
彼女の信念に貫かれた探求のまじめな態度がこの番組を魅力的なものにしている。
もっとも印象的な場面は、大逆事件に対して当時の知識人はなぜ黙っていたのかを考察したところだ。
ここでは明治大学の山泉進という初期社会主義の研究を専門とする教授がレヴィとともに意見を述べる。
山泉は当時の状況(軍国主義)を考えると知識人が何も言わないのは当然で、言わないのではなく言えないのだという。
それに対して、レヴィは次のように反論する。
「インテリというのはそういう(国家の)枠内を超えて何かをやるということで生まれる。国家が決めた枠内でやるだけならインテリは生まれない。やらなかったのは確かだが、できなかったと言い切れるか」
私は本当に驚いてしまった。
インテリ(知識人)という概念のとらえ方がまったくちがうのだ。
山泉は「きびしいね」と苦笑いし、日本は島国でフランスのように逃げるところがないとか不敬罪は懲役5年だとか言い訳する。
図らずも、インテリ(知識人)とは何かについて山泉とレヴィであまりにも対照をなしてしまった。
山泉は終始にこやかで余裕のある態度。
大逆事件という国家によるでっちあげの犯罪で幸徳秋水はじめ無実の庶民12人が処刑され、なぜそんなことが起こったのか、なぜ止めることができなかったのかについてしゃべるときもにこやかだ。
語る中身も専門家らしく客観的で、悪くいえば飯の種だ。
いっぽうレヴィはその国家犯罪に対する怒り、なにもできなかった当時の知識人への怒りを内に秘めて語る。
「あなたなら何もしないでしょうが私なら行動する」という無言の声が聞こえたような気がした。
*山泉教授をよく知りもせずに失礼なことを書いた。お許しを。
◆ 秋の風景 ◆
2012.10.20撮影 |
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