2013年12月2日月曜日

生活保護の扶養義務強化は家族を壊し弱者を極限に追い詰める

夏の参院選前の国会では生活保護法改悪案が廃案になってやれやれと思ったいたのだが、今国会で案の定再上程(11/7)され、すでに参議院で可決(11/12)、衆議院に送られている。

なんてことだろう。

この改悪案には生活困窮者自立支援法案というのもセットになっていて、そのひどさにはいくつかのポイントがあるのだが、その最もひどい部分は扶養義務の強化だ。

ことは民主党政権下で始まった。

――ここから転載(赤旗2012.6.22付)
生活保護 扶養義務を強要なら…

 生活保護の「不正受給」キャンペーンと一体に、厚生労働省が「(親族に)扶養ができない証明義務を課すことの検討」に入り、扶養義務者の資産調査を行えるしくみを検討中など、制度改悪の具体化が進められています。こうした動きにたいし「扶養義務を強要されると、本人も親族も共倒れになってしまう」「関係が悪化する」と訴える声が広がっています。(西口友紀恵)

 千葉県流山市の生活と健康を守る会の妹尾七重会長は、「そもそも扶養は生活保護の開始や継続の要件ではありません。しかし現状は、役所の窓口で扶養が要件であるかのように対応されて帰された人から、会への相談が後をたたない」といいます。

同市の小林勝己さん(47)もその一人です。小林さんは3年前、胸から足先にかけて突然、しびれと痛みに襲われました。診断は脊髄が壊死(えし)する脊髄梗塞症という難病。働けなくなり、収入の道も断たれました。

 妻と小学生の3人家族。貯金も底をつき、妻のパート収入だけでは暮らせないため生活保護を申請しました。

 一家は、以前から母親が所有する家に同居していましたが、母親は無年金で貯金をとりくずして暮らしています。申請当初、市は、母親名義の家を担保にお金を借りるリバースモーゲージ制度の利用を求めたといいます。

 しかし、もともと母親とは生計が別であることが認められ、生活保護を受けて今日に至っています。

 小宮山厚生労働相が、親族に扶養できない証明を課すといっていることにたいし、小林さんは「とんでもないことです。そんなことになれば母親やきょうだい、親戚につらい思いをさせたくないと、生活保護の利用をやめることになりかねません。3人で餓死、孤立死に追いつめられてしまう」と訴えます。

同市の浅井和子さん(37)=仮名=は、派遣で働いていましたが、3年近く仕事が入らず無収入に。「働けない」のに働かないと責める親との折り合いも悪くなり実家を出ざるをえませんでした。友人宅を転々とし、生健会の援助を得て生活保護を受けています。

 ヘルパー資格を得るため講習を受けてがんばっている浅井さん。「父親には扶養照会をしないよう市にお願いしています。扶養義務が強制されたら親子関係がさらに壊れてしまう」と、不安な気持ちを語ります。

派遣の仕事を失い、生活保護を受けて父親の介護をしている高田光男さん(34)=仮名=も、「生活保護を受けることに親族の間で抵抗があるのに、扶養できない証明を求めるなんて関係が悪くなるだけ」と批判します。

転載ここまで――


今さらながらに民主党の罪深さが思いやられるが、それを受け継いだ自公が今年の5月に改悪法案を上程したわけだ(7月に廃案)。

――ここから転載(赤旗2013.6.13付)
生活保護扶養義務の強化 親族の収入・資産まで調査可能
「水際作戦」の道具に

 参院での審議に移った生活保護法改悪案は、制度の入り口で利用者を締め出すしかけを幾重にも盛り込んでいます。その一つが、親族による扶養を事実上の要件に変える改悪です。資産や収入を徹底して調べ、生活の苦しい親族にも仕送りを迫るもの。生活保護の申請者を窓口で追い返す「水際作戦」の強力な道具になると、批判が強まっています。

 現行の生活保護法は、親族の扶養について「民法に定める扶養義務者の扶養…は保護に優先して行われる」(生活保護法4条2項)と定めています。親族による扶養を期待しつつも、当事者間の話し合いに任せ、親族から仕送りがあった場合に収入認定して保護費から差し引くことが原則です。親族による扶養は、生活保護利用の要件ではありません。

 しかし、実際の運用では、あたかも親族による扶養が保護開始の要件であるかのような説明を福祉事務所が行う事例が問題になってきました。別れた夫や別居している子ども、兄弟姉妹に面倒をみてもらうよう述べて、申請を受け付けない違法な対応です。

 日弁連の全国一斉生活保護電話110番(2006年)では、違法な「水際作戦」の可能性が高いと判断された118件のうち、「扶養義務者に援助してもらいなさい」との対応が最も多く、49件を占めました。

 銀行・雇い主に

 今回の改悪案は、実施機関の調査権限を強化することで、扶養を事実上の要件に変え、「水際作戦」にお墨付きを与えるものです。

 改悪案は、生活保護を利用する人の扶養義務者に対し、収入や資産の状況の「報告をもとめる」との条文を新設。官公署などへも「必要な書類の閲覧もしくは資料の提供を求め」、銀行や雇い主にまで「報告を求めることができる」としています。

 保護申請にあたって「親族が扶養義務を果たしていない」と福祉事務所が判断した場合には、書面で親族に通知することも明記。〝収入や資産を正直に報告して、できる限りの仕送りを行わなければ官公署、銀行、勤め先に照会をかけるぞ″と脅すことが可能になります。

 生活保護の申請をすれば、親兄弟すべての収入や資産が調べられ、仕送りを迫られる―。親族間の関係が悪化しかねません。

 生活に困窮している人と親族との闇では、交流が途絶えている場合も少なくありません。親族間のあつれきを恐れて生活保護の申請を断念する人が圧倒的に増える危険があります。

 貧困の連鎖助長

 扶養義務の要件化は、子どもの貧困防止にも逆行します。

 生活保護法改悪案と同時に審議されている「子どもの貧困」法案は、親から子への貧困の連鎖を断ち切ることを理念とし、生活保護世帯の子どもの高校進学率改善などを盛り込んでいます。

 ところが、高校や大学に進学し、就職して独立した子どもに対し、親への仕送りを執拗(しつよう)に迫るのが今回の改悪案で、「貧困の連鎖を助長するものだ」と批判されています。

 十分な審議を行ったうえで、貧困と格差を拡大する生活保護法改悪案は廃案にすべきです。
(鎌塚由美)
転載ここまで――


で、前回は廃案になったのだが、今回は11/7に参議院の厚生労働委員会で審議が始まった。
実質審議2日間、11/12に強行採決で可決した。

このときの審議で驚いたことがある。

夏の参院選で復活した共産党の小池議員は長野市の扶養照会の違法性を取り上げた。

赤旗11/8付には「法案には親族(親子や兄弟姉妹)の収入・資産などの調査を強化する規定がありますが、これを先取りする形で自治体が親族に調査書を送りつけている実態が明らかになりました」とある。

調査書には「生活保護法による保護決定にともなう扶養義務について(照会)」と名のついた通知書と「扶養届」と名のついた調査書の2枚がセットになっているが、これは何年も前から全国の自治体で公然と行われていることで、「実態が明らかになりました」などといえるものだろうか。
扶養届の方は私も過去広島市のものを2度ほど目にしたことがある。

この調査書の実物を手に入れたくて、ネットで検索してみると、「(自治体名)生活保護法施行細則」で多くの自治体がホームページに載せていることがわかった。

小池議員が取り上げた長野市の場合は、なぜかこの調査書が載っていなかった。
国会で問題にされたので削除したのかもしれない。

広島市のものが見つからなかったので、近隣の海田町のものを紹介しておく。

小池議員は長野市の「(照会)」文の中に、「しかし、この保護にあたっては、民法に定める扶養義務者の扶養(援助)を優先的に受けることが前提となっています」という一文を問題にした。

広島県海田町の「扶養届」
海田町の場合も「生活保護法では民法に定められた扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われるものとされております」とある。

しかもご丁寧に参考として次のよう法律の条文を載せている。

生活保護法
 第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養および他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

民法
第877条 直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

これらの脅しと「扶養届」にある扶養義務者の個人資産調査を見せられると、ほとんどの人(申請者とその親族)は夜も寝られなくなるぐらい落ち込むのではないだろうか。

後の小池議員の調査で、これらの調査書は2000年に厚労省自身がひな形をつくり、自治体に通知していたことがわかった。

この通知書や調査書の扱いは、自治体によって本当にまちまちのようだ。
通知書に書いてある通りに、親子兄弟姉妹を全国捜し回り、調査書を送りつけて扶養を強要する自治体や、扶養届を毎年提出させる自治体もあれば、書類を整えるという形だけですませる自治体もある。

広島市の場合はどうかと思い、「生活と健康を守る会」の知人に聞いてみた。

通知書の「…扶養は生活保護に優先して行われる」という一文や参考としての条文引用などはないということだ。
扶養届の書式は他の自治体と同じだが、個人資産の項目など白紙で提出しても何も問題ない。
金銭的援助も「できません」に○をして提出しても、あらためて調査が入ることもない。
つまり、広島市はきわめて良心的(?)なのだ。

水際作戦としてひじょうに有効的なこれらの調査書が親族に送りつけられているという実態が今頃明らかになったという共産党にまず驚いたのだが、その小池議員の追及に対しての政府の対応にさらに驚いた。

参院の厚労委(11/7)において、小池議員の追及に対し田村厚労相は「(親族の扶養は保護の)前提ではない。きちんと指導する」と答弁し、翌日、厚労省は次のような事務連絡を全国の自治体に出した。

今般、一部の地方自治体で使用されている扶養照会書等において、照会される扶養義務者に対して、扶養義務が保護を受けるための要件であると誤認させるおそれのある表現が使われていることが判明いたしました。つきましては、下記の点に留意のうえ、速やかに扶養照会書等について確認し、必要な対応を行っていただくよう管内福祉事務所への周知徹底をよろしくお願い申し上げます

このようにあっさり厚労省が非を認め是正措置をとるなどと誰が考えられるだろう。
しかも扶養義務を強化しようと目論む法案の審議の中で!

今まで法律違反を黙認、あるいは助長してきたが、突っ込まれて是正するのもしゃくだが、どっちみちこの改正法が通れば今度は今までのことが合法になるのだから、まあ少しぐらい共産党に花を持たしてやるか、なんて感覚なのだろうか。

ところがである。

先ほどの厚労省の是正通知文書の全文を見たくてネットで探し当てたのだが、なかなか一筋縄ではいかないことがわかった。

「下記の点に留意のうえ」とあって、下記の第1項は次のようになっている。

今般判明した事例では、扶養照会書等のうち、扶養義務者に対する依頼文書において「この保護に当たっては、民法に定める扶養義務者の扶養(援助)を優先的に受けることが前提となっています」との表記がされ、生活保護において扶養義務が保護を受けるための要件であると誤認させるおそれがある表現となっていた。そのため、扶養照会書等において同様の表現をしている場合は、局長通知様式第22号の「生活保護法では民法に定められた扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われるものとされております」等との表現に改めること

狐につままれたような気がする。

「この保護に当たっては、民法に定める扶養義務者の扶養を優先的に受けることが前提となっています」はいけないから「生活保護法では民法に定められた扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われるものとされております」に直しなさいと言っている。

長野市はダメだから海田町のようにしなさい、ということであり、海田町は厚労省に言わせれば正しいのだ。

巧妙でずるいごまかしがあるように思う。
赤旗の報道もこのあたりはわかりにくい(赤旗ではこの「下記」にふれていない)。

たしかに生活保護法の第4条2項は「民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養および他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」とあって、それを引用すること自体まちがいではない。
だが、そこには、だから生活保護利用は親族の扶養義務が要件なんだよと思わせたい意図があるように思う。
自治体も申請者も親族もみんなそう思ってくれればいいなという厚労省の期待が見えるのだが。

生活保護法第4条2項は、赤旗の鎌塚由美も書いてあるように、「親族から仕送りがあった場合に収入認定して保護費から差し引く」という意味なのだ。
生活保護利用の要件ではないことは今回も厚労省がはっきりと認めている。

赤旗日曜版2013.11.17号では、このあたりのことをわりと整理して書いてある。
一部引用する。

――ここから転載(赤旗日曜版2013.11.17付)
生活保護「親族扶養が前提」は誤り

 親族による扶養が「前提」という文言は長野市内12市で使用(県地域福祉課調べ)。すべて北日本コンピューターサービス株式会社(本社・秋田市)の管理システムを採用していました。

 同社の管理システムは519都道府県市区町で導入。「全国導入実績No.1」と宣伝しています。同社の担当者は、標準のシステムの通知書には「前提」という文言が入っており、使用状況を調査中と話しています。

 受給権を侵害する文書を含む管理システムが民間企業に丸投げされ、全国規模で広がっている可能性があります。

 また、生活保護を申請した人の親族に扶養を求める自治体の文書について、厚労省が見本をつくって全国の自治体に通知していたことが、小池氏の調べで分かりました。

 「扶養義務者による扶養は生活保護に優先して行われる」として。親族の家族全員の勤務先、月収、資産、負債などを添付するよう求めました。

 長野市の文書は、「前提」という文言以外、厚労省の見本に沿っています。

 12日の厚労委員会で日本共産党の辰巳孝太郎議員は、「(親族による)扶養義務は要件ではないということも、しっかり書くべきだ」と要求しました。

転載ここまで――


11/7の参議院厚生労働委員会には24人の委員がいて、共産党からは小池晃、社民党からは福島瑞穂の名が見える。(11/12の委員会では小池晃の代わりに辰巳孝太郎が出席)
実質2日間の審議の中でどのような論議がされたのか知らないが(議事録を読めばわかるがその元気がない)、少なくとも小池晃はこのような立派な仕事をしている。

11/12の採決では、共産と社民のみ反対だったらしいので、23対2(この日は25人の委員)で可決されたのだろう。
川田龍平なども賛成したんだなとちょっとがっかりする。

採決前の討論では、辰巳孝太郎と福島瑞穂の2人のみが意見を述べている(もちろん反対意見)。
参院選前の国会と同じく、国会議員がよってたかって弱い者いじめをしている。

今回の記事を書くに当たって、ネットでいろいろ見ているうち、和久井みちるという人の次のような文章を見つけた。(本人に連絡の取りようがないので無断で転載)

――ここから転載(livedoorニュースから)

 生活保護の「改悪」案が通るか否か、この一週間が山場と言われています。

 あたしの友人・知人には、生活保護について精通している方が多いのですが、あたしがいつも(っていうか、今)何を騒いでいるのか、よくわからないという方もいるかもしれないので、あらためて書いてみます。

 ご自身は生活保護とは接点はなさそうだと思っている人に今回、一番関係しそうなのは「扶養照会(ふようしょうかい」です。

 扶養とは援助のこと、照会とはお伺いを立てるというような意味合いです。

 たとえば今回、法が改悪されたあとに、Aさんが生活保護の申請をしようとすると、三親等内、つまり親兄弟、それにオジやオバ、甥、姪、孫にまで「Aさんの生活の支援(要するに仕送り)ができませんか?」という文書が届きます。

 あなたの親戚の中に、生活保護を必要とする人がいればあなたにもその文書は送られてくるのです。

 「え~、Aちゃん、大変なんだとは思うけど、ウチだっていっぱいいっぱいだから、仕送りまでは無理だよ~」と思ったら、あなたが「仕送りできない事情」を自分で「証明」しなくてはなりません。

 収入がいくらあって、資産がいくらあり、でも、ローンや支出がこうだから、無理!と証明できなければ、「おや、お宅は仕送りができるんじゃありませんか?」と言われていくばくかの仕送りを要求されることになります。

 あなたに仕送りしなくてよいようにするには、あとはAさんが保護の申請を取り下げることになるでしょう。

 今、困窮しているAさんが、申請を取り下げてしまったら、その先はどうなるでしょうか。

 こんなに大勢の親戚に仕送りを迫るような書面が届くなんて、申請する人はどんなに、どんなに切なく苦しいことでしょう。

 現在は、せいぜい子や親兄弟だけへの通知で済んでいます。それに、仕送りできない理由の証明までは求められていません。

 が、それでも扶養照会がつらくて、なかなか申請に踏み切れない人は今だって、たくさんたくさんいるのです。

 申請書を書かせてもらう場面にたどり着く前にも、様々な「水際作戦」という追い払い作戦にあいながら、ようやく申請書にたどり着けたら、今度は扶養照会という名の「針の踏絵」が待っています。

 もう充分困っているのに、どうしてこんな踏絵をふまなくては助けてもらえないのでしょう。

 生活保護を利用するということは、どんな境遇であっても「生きよう」と決心したということです。それが、そんなにも(よくない)問題のあることでしょうか。

 今週、この生活保護法改悪の審議が行われます。  どうか、ご自身にも周囲にも、身近に降りかかってくる可能性のある問題として、関心をもって見守ってください。

 そうして、本当にそれでいいのかどうか、一緒に考えてみてください。(和久井みちる)

転載ここまで――

なんとわかりやすく説得力のある文章だろう。
私などがうだうだとブログを書く必要などないではないかと思ってしまう。

和久井みちるについては私も知らない人なのだが、「生活保護とあたし」という本を出していて、大きな共感を呼んでいるようだ。
機会があれば是非読んでみたい。

自民党は「自己責任」「自助・自立」を自らの哲学として胸をはっているようだが、この生活保護の扶養義務強化は同じく自民党が大切にしている「家族」を壊すものだ。

扶養しなさい、援助しなさいと詰められたとき、「いっそのこと死んでくれれば」と思うことがあったとしても誰が責めることができよう。

そこまで親族に迷惑をかけるぐらいなら、いっそ死んでしまおうと思ってしまうのも、とくに弱い人間であるからではないと思う。


最後に、11/12の参議院厚労委での辰巳孝太郎と福島瑞穂の討論を転載しておく。

――ここからまたまた転載(厚労省Webから)

辰巳孝太郎

 私は、日本共産党を代表し、生活保護法の一部改正案及び生活困窮者自立支援法案に反対の討論を行います。

  反対する第一の理由は、申請書の提出を法律で義務付けることにより、現行法下で行われている水際作戦を合法化させる点です。法律の本則に申請書など書面の提出を義務付ける法制度はほかにありません。また、申請時に、現行の施行規則で定めている記載事項よりも改正法では法文上の記載条項が多くなっており、明らかに申請のハードルを高くするものであります。口頭申請に関して特別な事情がある場合はこの限りではないとなっていますが、基本的に文書での申請が義務付けられることに変わりなく、特別な事情は行政当局が判断するものであり、申請権が侵害される危険性は否定できません。

  第二の理由は、扶養義務者に対する調査権限の強化が盛り込まれ、扶養義務の履行が事実上要件化されたために、給付制限・抑制が更に進む事態が懸念される点です。保護を必要とする人たちに、親族に知られたくない、迷惑を掛けたくないと更に申請を断念させることにつながります。

 現行法の下でも、窓口では教示義務違反や申請書を渡さない、受理しないという事態が多発しており、生活保護の給付を断られ餓死者が出ている中で、申請書の義務付けや扶養義務の強化は困窮する要保護者に対して制度の利用を一層困難にし、国民を制度から締め出し、更なる貧困と餓死者を生み出すものであり、絶対に容認できません。

 第三に、生活保護の見直しと一体的に出された生活困窮者自立支援法案は、他法他制度優先を口実として、生活保護を受けるべき人が受けられずに支援事業に誘導され、保護の申請権を侵害しかねないこと、支援事業の事業者の資格基準がないために貧困ビジネスが拡大するおそれがあること、就労訓練事業も、取りあえず就労させることで最低賃金を下回る仕事が広がれば、地域の賃金相場を引き下げることになりかねません。

  先国会で廃案後も、これらの懸念に関係団体や研究者からの厳しい批判が相次ぎ、反対の世論が広がっています。国連の社会権規約委員会からも指摘されているように、生活保護の捕捉率が二割という国際的に低い現状を改め、申請手続の簡素化など、保護を受けるべき人が受けられる仕組みづくりこそ求められています。

 以上、憲法二十五条の理念を空洞化させる生活保護法案の廃案を強く求め、討論を終わります。

福島瑞穂

 社民党を代表して、今般の生活保護法一部改正法案と生活困窮者自立支援法案について、反対の立場から討論をいたします。

  生活保護法は、憲法二十五条に定められた生存権保障の具体化であり、国民生活の最後のとりでです。今回の戦後最大の生活保護改革は、今後の国民生活の保障に大きな禍根を残します。

 まず第一に、生活保護一部改正法案について、二十四条の新設は申請様式厳格化と扶養義務の強化による水際作戦の法制化であり、生活保護受給のハードルを確実に上げることになります。扶養義務者への通知と調査の条文化は、生活保護法四条が扶養義務の補足性を規定し、扶養義務を生活保護の要件としていないことを根本的に実質的に変えてしまう危険性があります。扶養義務者へ通知されるということで、生活保護の申請そのものをやめる人が多く出るでしょう。また、就労支援は稼働能力のある世帯を生活保護制度から追い出すことにもなりかねません。

 第二に、生活困窮者自立支援法案は、とりわけ稼働年齢層を生活保護受給につなげないためのハードルとして機能する危険性があります。内閣府事業のパーソナル・サポート事業を一部取り入れているという点では評価できますが、寄り添い型、伴走型の支援が本当に可能なのか不透明です。

 貧困及び生活困窮は家族や血縁に押し込めて解決する問題ではありません。今こそ税と社会保障と雇用の一体改革が必要です。切りやすいところから切るというびほう策ではなく、政府は、税の再分配機能の回復、非正規労働者の待遇改善やブラック企業と称される劣化した職場の立て直し、社会保障の立て直しを優先するべきだと指摘し、これからも一人一人の生存権を守るために働くことをお誓いし、反対討論といたします。


◆ ブラシノキ(フトモモ科ブラシノキ属) ◆
ブラシノキ 2013.5.31撮影
同上
去年も同じ日に同じ場所で同じ木を撮影したが、今年はずいぶんたくさん咲いている。さらに驚いたことに、10月にも咲いていた。天候不順のせいなのか、それがあたりまえなのかはわからない。

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