2013年3月11日月曜日

靖国派主導の教育再生実行会議が道徳を語るおぞましさ

政府の教育再生実行会議というところがいじめ問題への提言をまとめ、2/26安倍首相に提出した。

この教育再生実行会議というのは今年1月にできたもので、安倍首相の諮問会議である。
いっけん新しい組織に見えるが、何のことはない、第1次安倍政権のときに発足した教育再生会議の復活にすぎない。

つまり、安倍は自分の政治的野望の一つとして「教育再生」に強いこだわりがあるのだ。

第1次政権時の教育再生会議は実に多様な提言をしている。
それを具現化したものでは、今でも教員を苦しめている「教員免許更新制」や、子どもを学力競争に追いやり、結果的にいじめを助長している「全国学力テスト」などがすぐに思い浮かぶ。


●国の教育行政に関する審議会としては中央教育審議会があるにも関わらず、相互の役割の違いなどが明快でないまま設置され、安倍晋三やそれに近い人々の意向を反映するためのもの(=御用学者の機関)との指摘が各方面からなされた。実際、安倍内閣の崩壊後は独自のカラーも弱まり首相交代後半年足らずで解散するに至った。

●有識者の人選は山谷(えりこ)によっておこなわれた。委員には教育現場の経験者が二人のみで、教育問題を専門に研究している学者が一人もいない。

●『女王の教室』で阿久津真矢を演じた天海祐希への委員就任打診がされ“ドラマと現実の区別がついていない人がいる”との世評もネット上で上がった。結局“スケジュールの関係で出席は不可能”と事務所から回答があり、就任はなかった。

●教育社会学者の本田由紀(当時東京大学助教授)は朝日新聞『時流自論』欄2007年1月29日付において委員に教育学の研究者や専門家が一人もふくまれていないこと、および同会議でまとめられた報告書が内容よりもインパクトを重視して作成された経緯などを示し、「その提言が、将来この社会を担うすべての子どもたちの毎日の生活を大きく左右しかねないことに対して、計り知れない危機感を感じる(原文ママ)。」と危機感を表明した。それに続けて、報告案で挙げられているような授業時間数の増大と学力の向上には関連が認められない点、および「小・中学校教育課程実施状況調査結果」を参照しつつ、そもそも学力が低下しているという前提が確認できない点などを指摘し、「手前勝手に「愛」や「規律」「奉仕活動」を押しつけても」子どもたちの離反を強めるだけである、と同会議の姿勢を批判している。

今回の教育再生実行会議であるが、「実行」の2文字からにして安倍の思い入れが感じられる。

その構成員は次のようだ(Wikipediaから)。

閣僚
  総理大臣 安倍晋三
  官房長官 菅義偉
  官房副長官
  文部科学大臣 下村博文
  副大臣 (オブザーバーとして)
  政務官 (オブザーバーとして)

特に義家弘介政務官については下村文部科学大臣によると「教育再生会議のメンバーでもあったので、常時出席をしてもらいたい」とのことである。

有識者(委員)

  大竹美喜 (アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)創業者・最高顧問)
  尾﨑正直 (高知県知事)
  貝ノ瀨滋 (三鷹市教育委員会委員長)
  加戸守行 (元・愛媛県知事)
  蒲島郁夫 (熊本県知事)
  鎌田薫(座長)(早稲田大学総長)
  川合眞紀 (東京大学教授、理化学研究所理事)
  河野達信 (全日本教職員連盟委員長) 
  佐々木喜一 (成基コミュニティグループ代表)
  鈴木高弘 (専修大学附属高等学校校長)
  曽野綾子 (作家)
  武田美保 (スポーツ/教育コメンテーター)
  佃和夫(副座長)(三菱重工業代表取締役会長)
  八木秀次 (高崎経済大学教授)
  山内昌之 (東京大学名誉教授、明治大学特任教授)

有識者の中で知っている人といえば曾野綾子と八木秀次の2人しかいない。
しかもその2人は当然安倍好みの人選だろうが、靖国派の民族主義者であり、あまりにも偏向している人物。
このような露骨なことが平気でできるものだとあきれてしまう。

この教育再生実行会議について、村野瀬玲奈という人がブログで次のようなことを書いている。

大学、高校などの教育関係者はともかくとして、この手の「教育再生会議」に企業人、作家、知事を入れる必要はあるのでしょうか。教育者・研究者でもないのにここに選ばれた人たちの見識が教育者として他の人たちよりもすぐれていて提言を行なうに値すると考えられる根拠は皆無であると考えられます
 …
こんな役に立たない素人談義程度のことではなくて、現場の先生方や教育学者にもっと意見を聞き、いじめ対策のために現場の教員が良いと思う教育環境を整えることに政治は力をさくべきであり、後部座席にふんぞり返って座ってドライバーに的外れの運転指示を出すような教育再生実行会議は単なる「会議ごっこ」、あるいは「政治をしているふり」にすぎず、これこそ税金の無駄遣いです。
 …
このようなな「政治ごっこ」の代わりに何をすべきか、ひとつだけ提案させていただきます。政治や教育行政をつかさどる者たちがやるべきことは、素人談義を始める前にまず、「世界人権宣言」や「国際人権規約」や「子どもの権利条約」などに表現されている言葉の正確な意味での人権教育や、教育哲学史について自らが学ぶこと。そして、人権教育を学校教育の中に取り入れることです。

村野瀬玲奈という人のブログは今回はじめて読んでみたのだが、彼女の感性は信頼できるし、考え方にも大いに賛同できる。
宮武嶺や彼女のブログを見ていると、私などが政治についてブログであれこれ書く意味があるのだろうかと思ってしまう。

その教育再生実行会議が今回出した提言は次のようなものだ。
赤旗2013.2.27付
いじめ問題の解決のために「道徳の教科化」をいっている。

権力というものはいつもこうだ。
世の中の切実な問題を口実にして、自分たちのやりたいことをここぞとばかりに持ち出す。

まあ道徳の教科化は長年自民党がめざしてきたことだ。
なにせ教育勅語が最高の道徳だと言ってはばからない人たちの集まりだ。

子どもたちを管理教育でしばりつけ、学力競争に追い立て、最後は道徳教育によって心まで競争させて支配しようとしている。

安倍は教育基本法を戦後はじめて変えたとんでもない総理大臣だが、その安倍でも「教育は、不当な支配に服することなく」の文言を消すことはできなかった。
しかし日本の公教育の実態は政権側からの不当な支配を受けっぱなしだ。

安倍や下村文科相、そのお仲間の曾野綾子と八木秀次、こういった人たちが教育、なかんづく道徳について語るということは、勝手にしゃべるのは自由にしても、日本の公教育に公権力を持って口を出すということであり、本当におぞましいことだ。

かつての戦争をいまだに聖戦と位置づけ、日本のなした悪業を反省するどころか、反省しようとするものを自虐史観と切り捨て、なかったことにしようとしている。
殴った相手に謝りもせず、自分が正しいと居直り、謝りなさいとただしてくれる人を罵倒し、殴られた人をさらに痛めつけようとする。

このように人たちに子どもの道徳教育をゆだねるのか。
このような人たちにいじめの解決方法を示してもらうのか。

*今回の提言には少人数学級推進や教師の多忙解消など賛同できる面もふくまれている。

◆ クイナ(ツル目クイナ科クイナ属) ◆
クイナ 2013.2.20撮影 トリミングあり
前回モズを撮影した場所で、2人の60代とおぼしきご婦人が双眼鏡で熱心に何かを観察している。対岸の水ぎわにクイナがいるのだという。この時点で私はクイナがどんな鳥か認識していなかった。ヤンバルクイナが連想されたが、同じクイナ科だった。確かに飛ぶようすも見せずに隅の方でごそごそと地味な動きをしている(クイナは飛べる)。ちなみにクイナは漢字で水鶏と書く。教えてもらわなかったら絶対に見つけることができなかっただろう。実際、これ以後何度も同じ場所へ行ってみるが見ることがない。距離が遠いのでこの程度の写真しか撮れない。いい写真は今後の楽しみにしておこう。


上から目線の「道徳」では いじめ問題は解決しない

(赤旗2013.2.20付)

 教育再生実行会議が26日、いじめ対策として安倍晋三首相に提出した提言は、「本質的な」解決策として「道徳の教科化」を第一に位置付けました。

 子どもに規範意識を徹底すれば、子どもの問題行動はなくなるという、安倍晋三首相の持論を色濃く反映したものです。しかし、この方向が通用しないことは、教育現場の実態から明らかになっています。

 象徴が、大津私立中学校でのいじめ自殺です。同校は市内唯一の文科省指定の「道徳教育実践研究事業」推進指定校でした。「いじめのない学校づくり」などを掲げた取り組みが2009、10年度の2年間行われ、事件のあった学年もその授業を受けていました。

 大津市の第三者調査委員会の報告書は「道徳教育や命の教育の限界」を指摘し、「現場で教員が一丸となった様々な創造的な実践こそが必要」と述べています。こうした現実感覚と、同会議の提言はまったくかみ合いません。

 しかも道徳の「教科化」は、道徳内容を国が学習指導要領で細かく規定し、それがどこまで達成できたかによって成績をつけるもので、強い批判を受けてきました。提言に盛り込まれた「効果的な指導方法」の明確化、すべての教員が習得できる指導方法の「開発」「普及」などは、そうした道徳教育の上からの画一化を狙うものです。

 国が道徳内容を決定して国民に徹底することは、民主主義社会では許されない統制です。また、道徳に評価を持ち込めば、表面的にポーズを取りつくろうなど、道徳を形骸化させます。

 いじめには子どものいら立ちの発散という面があります。大津市の第三者調査委員会報告書は、社会が「ますます競争原理と効率を求める方向に」すすんでいるとした上で、「現代の子どものいじめは社会の在り方と根深いところで繋がっている」とし、「学校間格差、受験」などのもとでのストレスの強まりにも目をむけるように促しました。

 いじめを防ぐためには、学校を子どもの尊厳が守られ、子どもの声が丁寧に聞き取られ、参加が保障される場所にすることが必要です。それが学校を真に道徳的な場所にします。「道徳教育」の一方で、管理され、成績で差別されたりしては、道徳教育に効果はありません。

 提言には、いじめている子への「毅然とした指導」「懲戒」など子どもへの厳罰化の方向も見えます。しかし、いじめている子は、「いじめ」に走るだけの悩みやストレスを抱えています。子どもの事情をきちんと聞くことを通じて、いじめをやめさせ、立ち直りを支える愛情が必要です。懲戒=罰では解決しません。

 提言は、教員の目が行き届くために国と教育委員会に対して少人数学級の推進を求め、教職員の多忙の解消を図ることを求めています。こうした条件整備こそが切実に求められます。しかし安倍政権は13年度予算で35人学級を途中で中止にするなど、逆行しています。
(斎藤瑞季)

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