2022年2月26日土曜日

国際ホロコースト記念日 ②日本では

1月27日の国際ホロコースト記念日に、日本が関連行事をしたとかなにがしかの反応を示したとかいう話ではなく、この時期に日本ではどのような歴史認識をめぐる動きがあったかを書いておきたい。

佐渡島金山 世界文化遺産推薦をめぐって

佐渡金山 2017.10.1筆者撮影
佐渡島金山を世界遺産に推薦しようとする動きは、新潟選出の国会議員を中心として2015年ぐらいからあったらしいが、政府は慎重な態度を崩さず、今回も見送る方針でいた。

それが急きょ推薦する方向で検討に入り、今年2月1日、閣議決定された。

くわしい経過は「佐渡金山、歴史的価値はそっちのけ 世界遺産推薦の舞台裏にただよう政局と外交の思惑」などを見てほしい。

概略は次のようだ。

佐渡金山では、戦時中に強制連行した多くの朝鮮人を強制労働させ、多くの犠牲者を出した。

そのような歴史を持つものを世界遺産にするとはけしからんと韓国が強く抗議している。

2015年、日本政府は中国が「南京大虐殺の記録」を世界記憶遺産に推薦しようとしたとき、大虐殺はなかったという立場で猛烈な反対・抗議をした。
また、韓国が「慰安婦資料」を世界記憶遺産に登録しようとしたときも同様に反対している。

そしてユネスコに「関係国間で政治対立がある案件の申請は受け付けるべきではない」などと制度改革を主導した。

今回佐渡金山を日本が世界遺産に推薦するとなると、かつて日本が主張してきたことがブーメランになって返ってくる。

また、2015年に「明治日本の産業革命遺産」として長崎県の端島(軍艦島)などを世界遺産に登録するとき、日本政府は今回と同様、韓国の強制連行・強制労働を理由とする韓国の抗議をかわすため、世界遺産委員会で「意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者」がいたとし、当時の徴用政策を理解できるような措置を講じると説明。
説明戦略の策定に際し「真摯に対応する」と約束した。

2020.1.21 夕刊フジ(ネットから)
しかし日本政府はその約束を守っていない。

以上のような理由で、日本政府は佐渡金山の世界遺産推薦に消極的だったのだ。

ではなぜ日本政府は態度を急変させて佐渡金山の推薦に踏み切ったのか。

そこにはまたしても安倍晋三らの破廉恥な策動があった。

推薦見送りとなると、韓国の抗議に屈したことになる。
「日本には後ろめたいことがある」と世界にまちがった印象を与えてしまう。

というわけだ。

で、岸田首相は韓国には屈せず、安倍晋三に屈することにした。

日本という国は「歴史戦チーム」というワヤクチャなものまで作ってどこまでも世界に恥をさらす

靖国派の歴史改竄主義者らが「従軍慰安婦」などなかったと叫んでいることは周知のことだが、ここにきて強制連行や強制労働もなかったなどと言い出した。

いや、私がよく知らないだけで、彼らはずっとそう主張してきたのだろう。
夕刊フジ 安倍元首相が語る
「日本の誇り」新連載
なんせ、かの侵略戦争をいまだに「聖戦」「大東亜戦争」「アジア解放戦争」などと思い込み、ホロコーストまで否定、はては現職の副総理が「ナチスに学べ」とまで言う連中だ。

このとんでもないやつらの最前面に今安倍晋三が立っている。

さすがに首相のときは一定の歯止めもあったろうが、その枷がとれたらどこまでもその醜悪な正体を惜しげもなく現してくれる。

安倍は今回の件に関して自身のツイッターなどで次のようなことを述べている。

(韓国側に)歴史戦を挑まれている以上、避けることはできない。(ツイッター1/27)

今こそ、新たな『歴史戦チーム』を立ち上げ、日本の名誉と誇りを守り抜いて欲しい。(夕刊フジ1/26)

この「歴史戦」というわけのわからないことを叫ぶ動きに対して、共産党の志位委員長は2月1日の記者会見で次のように批判している。

これは根本的に間違った議論だ。
歴史は戦争ではなく、事実が何より大切であり、事実に正面から向き合うことが必要だ。
歴史を“戦場”にしてはいけない。

私は知らなかったのだが、歴史戦チームというのは第2次安倍政権時につくったということだ。
そして、今回は岸田が安倍にせっつかれてその歴史戦チームを復活させ、韓国と戦うらしい。


<5分でわかる>特命チームがカギ?世界遺産登録
岸田総理は今回、歴史戦チームを官邸に作って佐渡島の金山の登録に向けて準備を本格化させている。
政権の歴史認識に基づいて歴史的な事実を集めて検証を進め、国際社会の理解を得るための戦略を練るなどの特命をおびたチーム。
第2次安倍内閣で立ち上げ、官房副長官補を筆頭に官邸に有識者を集め、歴史認識が絡む外交交渉の節目で重要な役割を担った。
世界文化遺産に関しても2015年に明治日本の産業革命遺産に登録したときの交渉などで日本の立場を伝えたり、国際社会で反論するための資料を準備したりした。
う余曲折を経た日韓の交渉の裏でチームも貢献。
岸田総理は歴史や公共政策などの専門家や実務家を集め、歴史戦チームを結成し、登録に向けた準備を本格化させたい考え。
外交筋によると韓国側が国際社会に対して反対を求める働きかけがすでに始まっているとみられるだけに、歴史戦チームには反論に耐えうる資料や論拠を固めることが求められる。
韓国側が展開する主張に対して歴史戦チームがいかに機能するか、推薦決定に向けた岸田総理の決断が注目される。

転載ここまで――

外交的に一応まともな政府という枠の外で安倍らが「歴史戦チーム」などとワヤクチャなことを始めるのは勝手ではあるが、まさか政権内でそのような組織を作っていたというのはちょっとした驚愕だ。

岸田も安倍の傀儡に過ぎないということか。

ところで上記NHK「シブ5時」のニュース解説だが、岩田明子が行っている。
岩田明子といえば政権のスポークスマンというより安倍晋三のスポークスマンといった方がいいぐらいその評判が定着しているNHK政治部の記者だ。

したがって、このシブ5時の解説も露骨な安倍賛美、政権べったりの内容になっている。

志位委員長は前記記者会見で、岸田政権が歴史戦チームを設置しようとしていること、そのことをNHKが上記シブ5時のように報道したことに触れ、次のように述べている。

『政権の歴史認識に基づき事実を集め』などということは、根本的にまちがっている。
『政権の歴史認識』が先にあり、それにあう事実だけを集めるということは、歴史の改ざん、偽造をしていくことになる。
歴史の事実に向き合い、誤りを認めていくことが大事だ。

こういうことを安倍元首相が号令をかけ、岸田政権が従うのは恥ずかしいことであり、NHKがこうやって報じることは、公共放送のあり方として大きな問題があると強い危惧を覚える。

元NHKプロデューサーの永田浩三は赤旗の取材に次のように答えている(赤旗2022年2月5日付から最後の部分)。

「政権の歴史認識に基づき事実を集め」とは異常です。
「政権の歴史認識」がまず先にあり、それに合う事実を集めるなどというのは、歴史修正主義そのものです。
岩田氏と安倍元首相との距離の近さに驚きはしません。
ですが歴史の歪曲を許すような発言は許しがたく、公共放送NHKの責任も重大です。

金学順さんが日本軍「慰安婦」だったと名乗り出てから31年。
安倍氏は「慰安婦」問題や南京大虐殺などに対して否定的な立場をとり続けてきました。
歴史戦チームの活動は、産経新聞による朝日新聞バッシングや日本維新の会の吉村大阪府知事が大阪市長時代に行った「平和の少女像」否定の発言にもつながり、世界に根深い亀裂をもたらしています。
NHKが日々現代史をテーマにした力のこもった番組を放送していることは確かです。
戦後の歴史認識がどのような歩みをたどり、深まってきたのか、岩田氏や「シブ5時」の編集部には学んでほしいと思います。

佐渡島金山の世界文化遺産をめぐるまとめとして、赤旗の社説を載せておく。
赤旗 2022.2.4付

新たな教科書攻撃

国際ホロコースト記念日の時期とは多少ずれてしまうが、佐渡島金山世界文化遺産推薦をめぐる内容にも関わるので、昨年来行われてきた新たな教科書攻撃について、赤旗のコラムが簡潔にまとめているので転載しておく。
赤旗 2022.2.20付 レイアウトは変えた

ということで、前回の投稿「国際ホロコースト記念日 ①世界では」と比べてみれば、いかに日本が過去を省みず、同じ過ちを繰り返そうとしているかがよくわかる。
同じ過ちとは、それは他国を巻き込んで自国民を地獄の底に突き落とす所業だ。
そのことは「敵基地攻撃能力の保持」などと勇ましく公言する政府の姿勢(狂気)にも表れている。


◆ ハナミズキ(ミズキ科ミズキ属) ◆
ハナミズキ 2018.4.18撮影 近くの川土手
2枚の花が折り重なっているせいもあるが、とても変わった形をしていてハナミズキに見えない。1つ1つの花も十分開ききっていないせいだろう。実は花弁(花びら)に見えるのは総苞(花序を基部から包む特別な葉の一種)で、中心にある粒々が花序(花の集まり)。その花序はこの写真ではまだつぼみになっていて、一つひとつが順次開いて直径5ミリ程度の花になる。

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