2021年10月13日水曜日

岸田新首相と核廃絶 広島県の恥さらし

2021.10.8 岸田首相 所信表明
10月8日、岸田新首相の国会における所信表明演説を19時のNHKニュースで見た。
4分程度のハイライトだったが、突っ込みどころ満載だ。
特に核兵器廃絶に関する次の部分は、まあ恥ずかしげもなくあんな大口がたたけるもんだとあきれてしまった。
被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、「核兵器のない世界」です。 
私が立ち上げた賢人会議も活用し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たします。
これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名の松明(たいまつ)を、私も、この手にしっかりと引き継ぎ、「核兵器のない世界」に向け、全力を尽くします。

岸田が過去核兵器廃絶にどう向きあってきたのか、赤旗の次の記事が端的に表している。

赤旗 2021.10.12付 赤線は筆者
上記記事では岸田の過去の見解を4点(赤線部分)ほど上げているが、私が特に忘れることができないのは最初の2014年のスピーチでの

核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定することを核保有国が宣言すべき

という恐るべき発言だ(当時の赤旗記事はここ)。

本人は、世界で唯一の被爆国のしかも広島出身の外務大臣として、核兵器反対、核廃絶に向けてこれほどの立派な考えを持っているんだという自覚と誇りを持って発言したようだ。
しかしながら、誰が考えてもこの発言は核兵器は最終段階では使ってもいいんだ(核兵器容認)ということであり、核保有国がそのことを宣言すべきだとまで言っている。

当然被爆者や核廃絶運動に関わっている多くの人たちから総反発を食らった。

私もリアルタイム(といってもニュースでだが)でこの場面を見て、広島出身で、核兵器のない世界をめざしている政治家がこういうことを言うのかと驚いた。
が、それ以上に驚いたのは、なぜ私のこの発言がこれほど非難されなくてはいけないのかとうろたえている岸田の姿だった。

つまり、岸田はこの程度のことがわからない政治家だということを自ら暴露してしまった。

国連で採択され(2017年7月)、今年の1月に発効した核兵器禁止条約は人類の悲願といってもいい画期的なものだが、その条約が発効するまでの日本政府のあまりにも情けない言動は周知のことであり、羞恥のことでもある。

岸田は、今回の所信表明演説にいたるまでにも、自民党政権の公式見解である「この条約には核保有国が一国も参加していないので意味がない」「核保有国と非核保有国との分断を生み有害ですらある」「日本は唯一の被爆国として核保有国と非核保有国との橋渡しをする」などと繰り返してきた。注 追記

おのれが所信で表明した、『①被曝地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、「核兵器のない世界」 ②核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たす ③これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名の松明(たいまつ)を、私も、この手にしっかりと引き継ぎ、「核兵器のない世界」に向け、全力を尽くす』ためには、そっこく核兵器禁止条約に参加しろと言いたい。

日本がこの条約を批准し、先頭に立って運動を進め、核保有国を巻き込んでいくことこそ唯一の被爆国の首相の務めではないか。

こんな簡単なことがわからないとは、岸田は外務大臣から総理大臣になっても、頭の中はまったく進歩していないってことだ。

広島県の恥さらしといってもいいだろう。

他の突っ込みどころ満載の件についてはまたの機会に(いつのことやら)。

 追記 2021.10.14 

本文中、核兵器禁止条約についての自民党政権の見解の一つとして「核保有国と非核保有国との分断を生み有害ですらある」と書いたことについて補足しておく。

2016年に国連総会第一委員会が核兵器禁止条約に向けた交渉を2017年に開始するよう求める決議案を採択した。
日本政府はこの決議に反対したのだが、立憲民主党の逢坂誠二議員がこの件に疑義を持ち、国連採択3日後、日本政府(安倍政権)に次のような質問書を提出している。

日本は唯一の被爆国として、核廃絶を世界の先頭に立って訴えるべきであり、今回の反対には相当な疑義がある。日本政府が本決議案に反対した理由を分かりやすく説明していただきたい。

これに対して、日本政府は安倍晋三名で次のように回答した。

核軍縮に関する我が国の基本的立場は、核兵器のない世界の実現のためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識及び厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づき、核兵器国と非核兵器国との間の協力による現実的かつ実践的な措置を積み重ねていくことが不可欠であるというものである。御指摘の決議案は、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発が我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている中で、このような我が国の基本的立場に合致せず、また、核兵器国と非核兵器国との間の対立を一層助長し亀裂を深めるものであるとの理由から、慎重な検討を重ねた結果、反対したものである。

このような経緯を踏まえて「有害ですらある」と書いたのだが、岸田本人は核兵器禁止条約は重要であるという見解を何度か表明していて、「有害である」という認識はもっていないと思われる。


◆ オランダガラシ(アブラナ科オランダガラシ属)◆

オランダガラシ 2015.5.5撮影 近くの河原
ふつうクレソンと呼ばれていて、サラダなどの食用としてよく用いられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿