2019年6月7日金曜日

ミキ・デザキ監督のドキュメタリー映画「主戦場」 「慰安婦」問題に決着をつけた!?

「慰安婦」問題と南京大虐殺は、日本が起こした15年戦争(侵略戦争)の象徴的なテーマとしていまだに大きな論争を起こしている。
「聖戦」として行われたかつての戦争の様相は、まさに侵略戦争の本質である極悪非道をやり尽くした感があって、上記2件だけがいつも問題になるっていうのも問題だと思うのだが、まあ実態はそうなっている。

実は、「慰安婦」問題も南京事件もとっくの昔に決着はついている。

南京事件については、外務省のホームページにもあるように、その事実は日本政府も認めている。
問6「南京事件」に対して、日本政府はどのように考えていますか。 
日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。しかしながら、被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であると考えています。

「慰安婦」問題については、かの有名な河野談話がある。

慰安婦関係調査結果発表に関する
河野内閣官房長官談話
いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する
なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。(1993年8月4日、外務省のWEBサイトより)
このときつくられたアジア女性基金(2007年に解散)により、元「慰安婦」の一部(600人前後?)には、「償い金」といっしょにときの日本総理大臣の手紙などが贈られている。
その総理の手紙とは次のようなものだ。



 総理から元「慰安婦」への手紙 

拝啓
 このたび、政府と国民が協力して進めている「女性のためのアジア平和国民基金」を通じ、元従軍慰安婦の方々へのわが国の国民的な償いが行われるに際し、私の気持ちを表明させていただきます。 
 いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。 
 我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。 
 末筆ながら、皆様方のこれからの人生が安らかなものとなりますよう、心からお祈りしております。
敬具 
平成八(一九九六)年 
              日本国内閣総理大臣  橋本龍太郎

この手紙は、橋本龍太郎以下、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎と歴代の首相が同文の手紙を贈っている。

このように、南京事件にしても「慰安婦」問題にしても決着がついているのになぜ現在も大きな対立構図になっているのか。

それは、「心からのお詫びと反省」「過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝える」と言っておきながら、一部靖国派または日本会議と呼ばれる極右の活動家、研究者、ジャーナリストのみならず、政権中枢、例えば安倍晋三らがまったく逆の言動をし続けているからだ。

「南京大虐殺はなかった」「慰安婦は売春婦だった」などというこれらの連中(歴史修正主義者などとレッテルを貼られている)の主張と、歴史の事実を総括・教訓として二度と戦争のない平和な世界をつくろうとする(リベラル派といっていいのかどうか)人たちの主張をスクリーン上で闘わせたのがミキ・デザキ監督のドキュメンタリー映画「主戦場」だ。
赤旗 2019.4.16付 レイアウトは編集した
この赤旗の記事を読んで、これは絶対に見逃せない映画だなと思った。
以後、赤旗本紙で1度、日曜版で1度、週刊金曜日でも1度、この映画の紹介があり、さらに赤旗でもう1度ミキ・デザキ監督の会見が載った。
赤旗 2019.6.5付 レイアウトは編集した
そして、昨日(6/6)映画館へ行った。

映画作りの手法に驚いた。
マイケル・ムーアは自分の正しいと思う方向にぐいぐいと絵を作り上げていくが、ミキ・デザキはできるだけ両者を対等に登場させ、自由に発言させ、それを編集によって討論している形式にする。

もちろんマイケル・ムーアは大好きな監督で、彼の映画は欠かさず見ているが、ミキ・デザキ監督は映画作りとしてはデビュー作なのだが、なんと見事な手法で歴史修正主義者をコテンパンにしたものだ。

鑑賞後にパンフレットなど買ったことのない私だが、つい700円もする公式プログラムを買ってしまった。

厳密には監督は両者を全くの平等の土俵に乗せているわけではない。
綿密なリサーチによって、歴史修正主義者の主張の一つひとつが次々にまちがっていることが明らかになる。
その課程で監督の重心がリベラル派に移っていくのはやむを得ないことだろう。

私がこの映画のもっとも優れたところ(結果的に?)だと思うのは、公式プログラムで竹田砂鉄も書いているのだが、歴史修正主義者たちがインタビューに自己の人間性を無防備にさらしているところだ。
彼らの言い放つあまりにも品性のない下劣なことばの数々、そしてその表情。
それを見るだけでもう勝負はついた。
だからこそ、彼らはこの映画の上映中止を要求しているのだろう。

この映画がどれほどの観客を集めるのかはわからないが、見た人はよほどのコアな極右でないかぎり、靖国派(歴史修正主義者)の主張を遠ざけるにちがいない。
ネトウヨが跋扈するネットの世界にも変化が生まれるかも(甘いかな)。
安倍晋三の正体に気づく人が増えるかな。

そうなれば、戦後ドイツが自ら戦争の総括をして、その教訓をことあるごとに政権の中枢が自らの言動によって示し続け、そしてEUのリーダーとしての地位を得たように、日本もまた東アジア、いや世界の平和のリーダー国としての名誉ある地位を占めることができるだろう。

最後は夢のような話になったが、要はひとりでも多くの人がこの映画「主戦場」を見てほしいということだ。


 五島列島シリーズ⑧  ◆ アオサギ(ペリカン目サギ科アオサギ属)◆


アオサギ 2018.5.5撮影 福江島鐙瀬溶岩海岸
日本中どこにでもいるアオサギ君。こんにちは。

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