2013年6月5日水曜日

生活保護改悪法案 衆院厚労委での審議(前回の続編)

衆議院本会議で生活保護改悪法案が可決された。
厚生労働委員会では委員がいなかった生活の党が法案に賛成。
生活の党も人間の血が流れていないことがわかった。

採決は起立によって行われているので、はっきりした賛否数はわからない。
共産党が8人、社会民主党・市民連合(社民党+α)が2人、無所属が11人だから、計21人が反対したとしても、残りの459人が賛成したことになる(欠席がいないとして)。
無所属11人のうち、本当は何人が反対したのか、それは誰なのか知りたいところだ。

衆議院総数480人のうち460人以上がこの改悪案に賛成したとみられる。
政治が作り出した格差社会の最大の被害者ともいえる最貧層を、さらに政治が総力を挙げていじめ抜こうとしている。

さて、前回のブログ「生活保護改悪案 衆院委で可決 そのとき阿部知子はどうした?」の続編だ。

その翌日(6/3)、まず高橋ちづ子の国会事務所へ電話した。
高橋議員はあいにく外で活動中で、厚労委で阿部知子が採決の時どうだったかは、確認できしだい、折り返し私の方へ電話してくれることになった。
その電話で応対してくれた秘書は、阿部知子は無所属で質問や意見の時間が保証されていないということを教えてくれた。
つまり、阿部は委員会の最後の採決の時しか意思表示ができないのだ。

その高橋議員の秘書は、委員会のようすは国会のホームページの動画で見られるということを教えてくれた。
採決の時のようすもうまくいけばその動画で確認できるかもしれない。

そこでさっそくそのページをさがし、衆議院インターネット審議中継のビデオライブラリで5/31の厚労委の動画を見つけた。

この日の厚労委は7時間15分あったみたいで、そのすべてが動画で見られる!
しかし、そのすべてを見る元気はない。
あちこちちょっとずつつまみ見をしているうちに、高橋国会事務所から電話があり、阿部知子議員は改悪案に反対したと教えてくれた。

それで結果はわかったのだけれど、いちおう阿部知子の国会事務所にも電話しなければ失礼かなと勝手に思い、電話した。

やはり秘書が電話に出て、それは反対したに決まってるでしょという感じで応えられた。
私が、阿部議員は質問も意見表明もする時間がなくて気の毒に思っているのだが、彼女の意見なりをホームページなりブログなりで表明する予定はあるのかと問うと、それはわからないとおっしゃった。
終始一貫して私を警戒している雰囲気だったが、とくに腹も立つこともなく、突っ込んでやろうという気にもなれなくて、ありがとうございましたといって早々に電話を切った。

阿部知子は社民党時代、何度も委員会で質問をしているところを見ている。
むしろ私は好きだったし、応援もしていた。
共産党に来ればいいのにとさえ思っていた。

その彼女も多くの同類と同じく社民を裏切り、不可解な行動をしている。
それでも人間の血は流れていたということだ。
辻元や横光とはちがう。

改めで国会のビデオライブラリで委員会のようすを見てみる。
最後の採決のようすだが、何度見ても高橋と阿部の2人が確認できない。
カメラは正面からざっと全体を右から左へ動くのだが、全員が起立している。
起立する寸前「反対!」というひとりの声が飛ぶ。
その声は高橋のものと思われるが、ひょっとすると阿部なのかも知れない。

何度もくり返し見ているうち、正面から向かって左一番奥の縦に並んだ2人が高橋と阿部だろうと見当がついた。
この見当は、NHKニュースWEBの動画を見てまちがっていないことがわかった。

どうでもいいことなのだが、45人の委員の中で、座ったままでいる2人をさがすことの何とむずかしかったことだろう。
正義はかくも小さく押しつぶされていた。

5/31の厚労委の午前は参考人の意見表明と参考人に対する質疑が行われている。

ここで刮目すべきはNPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長である稲葉剛の意見だ。
約16分の意見表明は、淡々としたものではあるが、貧困問題の最前線で奮闘しているものだけが持つ迫力、情熱、憤り、そして正義か感じられ、目を離せない。
彼がこの改悪法案に強く反対すると言っているのだ。
誰が反論できよう。
しかし、稲葉に同意したのは高橋と阿部の2人だけ。

この稲葉の意見表明は国会のビデオライブラリ以外にユーチューブにもアップされている。
ひとりでも多くの人に見てほしい。

稲葉の発言内容は全文テキストになっていないだろうかと調べてみると、もやいのホームページに要旨が載っていた。
このブログでも引用しておく。

この日の委員会では生活保護改悪法案の他に子どもの貧困対策法案や生活困窮者自立支援法案なども同時に審議されていたのだが、高橋と阿部を除くすべてが翼賛なのだから、この7時間15分の審議はいったい何だろうかと思う。
たった2人しかいない反対者の1人である阿部の口を封じ、残りのすべてがなれ合い的に質疑応答する。
採決前の討論も高橋の反対討論が1本あるのみ。

それでも高橋は参考人質疑で1回、質問で1回、討論で1回と3回も発言機会があったわけだが、阿部はひたすらじっと座り続けていただけ。
おまけに採決でも反対の意思表示のために座ったまま。
まったく同情してしまう(皮肉ではない)。

阿部知子が未来に向けて吹かそうとしているみどりの風とはどんなものかよくわからないが、緑は私の好きな色だし、期待を裏切らないで活躍してほしい。


もやいのホームページから
衆議院厚生労働委員会での発言要旨
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長 稲葉剛
 
本日は発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 私は過去20年間、東京都内を中心に約3000人の生活困窮者の方の生活保護の申請に同行してきました。なぜ申請の同行が必要かというと、一人で行くとほとんどの場合、「家族に養ってもらいなさい」、「働けるからダメ」などと言われて追い返されるからです。私たちが同行することで、生活保護につながった方もたくさんいますが、一方で支援の手を届けることができずに、路上生活のまま、貧困状態のまま餓死した人、凍死した人を、私は何人も見てきました。また、かろうじて生活保護につながっても、その時には結核やガンなどの疾患が手遅れの状態になり、命を落とした人にもたくさん会ってきました。

 つい先日、5月24日にも、大阪市北区で28歳の女性と3歳のお子さんが亡くなっているのが発見されました。死因はまだ特定されていませんが、餓死の疑いがあると言われています。報道によれば、ドメスティックバイオレンスの被害から逃れるために転居をされており、大阪市に引っ越し前に一度、守口市で生活保護の相談をされていたということです。なぜ生活保護制度につながることができなかったのか、徹底した究明をしていただきたいと思います。

 昨年1月には札幌市白石区で40代の姉妹が孤立死をされるという事件がありました。白石区の福祉事務所に三度にわたって相談に行っていたにもかかわらず、非常用のパンを渡されただけで、事実上追い返されていました。お手元の資料の7ページ目から9ページ目にかけて、情報公開請求で明らかになった白石区福祉事務所の面接記録の写しを添付しています。「急迫状態の判断」という欄を見ていただければわかりますが、ライフラインの状況など詳しい聞き取りをほとんどしていません。二回目、三回目の相談では、「保護の要件である、懸命なる求職活動を伝えた」とあります。要するに「がんばって、仕事を探しなさい」と言って追い返したわけです。

 こうした餓死事件、孤立死事件は「氷山の一角」に過ぎません。資料の2ページ目にあるように、厚生労働省の「人口動態調査」に基づく統計で国内の餓死者数は1995年から急増し、95年から2011年までの17年間に「食糧の不足」が原因で亡くなった方は実に計1129人に及びます。年間70人近い方が「食糧の不足」により亡くなっているのです。しかも、実際は餓死であっても何らかの疾患を伴っていることが多いので、別の死因になる場合もあります。この数字自体が「氷山の一角」であるということを知っていただきたいと思います。

 さまざまな事情により生活保護制度などの社会保障制度につながることができずに餓死、孤立死してしまう。制度の知識がなかったり、制度を利用するのが恥ずかしいという意識、スティグマから制度の利用をためらう人もたくさんいます。また、窓口に行っても、いわゆる「水際作戦」によって追い返されてしまう。貧困ゆえに餓死や凍死、孤立死に追い込まれる人は跡を絶ちません。これは政治の責任であり、私たち社会全体の責任です。

 資料の6ページにあるように、国連の社会権規約委員会からも先日、日本政府に対して勧告が出されました。そこには生活保護の申請手続きを簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるように求める、また生活保護にともなうスティグマを解消するよう政府は務めるべきだと書かれています。

 そうした事実を前提に、今回の生活保護法改正案をめぐる動きを見ると、残念ながら改正の方向性が正反対を向いていると言わざるをえません。

 政府が提出した生活保護法改正案について、私たちは、24条1項・2項の規定が、申請書や添付書類の提出を要件化するもので、違法な「水際作戦」を合法化する内容になっていること、親族の扶養義務を強化することで事実上、扶養を要件とするものだと批判してきました。

 このうち、申請権侵害の問題については、与野党による法案修正により、一定の歯止めがかかったと評価しています。しかし、もう一方の扶養義務強化の問題は未だ解消されていません。

 扶養義務が強化され、生活保護を申請した親族の資産や収入に対して徹底した調査がおこなわれることになると、当然、それは水際作戦の口実に使われることになります。資料3ページ目に掲載した日弁連の電話相談会の報告でもわかるように、今までも「家族に養ってもらえ」というのは最も多い追い返しの手法でした。今回の法改正により、各福祉事務所がこうした「水際作戦」を強化しかねないと懸念しています。

 また、扶養義務が強調されると、生活に困って役所に相談に行く人にとって、「自分が申請すれば、親族の資産や収入が役所によって丸裸にされてしまい、家族に迷惑をかけてしまう」という意識が働くことになり、申請の抑制につながってしまいます。DVや虐待が過去にあったケースでは、親族に連絡されてしまうことで、自分や子どもの身の安全にも影響することがあり、これまでも問題になってきました。大阪で亡くなった母子の方も、もしかして家族に知られたくないという意識から助けを求められなかったのではないかと推測します。

 生活保護の捕捉率は2割~3割と推計されています。扶養義務が強化されてしまうと、ただでさえ低い生活保護の捕捉率がますます下がってしまいかねません。それは餓死・孤立死、貧困ゆえの死者が増加するという結果をもたらすものです。

 それゆえ、改正法案の24条8項、28条、29条の各規定については削除または修正していただきたいと考えます。

 ほかにも、生活保護利用者に生活上の責務を課すなど、修正案にはさまざまな問題が残されています。国連の社会権規約委員会が求める「尊厳をもった扱い」や「スティグマの解消」とは正反対に、生活保護の申請者や利用者、その家族を上から管理しようという発想が随所に見られます。

 暴走している機関車が今まさに人々をひき殺そうとしている時に、自ら列車に飛び乗って軌道を変えてくれた方々には感謝しています。しかし残念ながら、列車の暴走は止まっていません。

 今回の生活保護法改正は63年ぶりの抜本改正であり、拙速な形ではなく、もっと時間をかけて審議すべき問題だと思っています。生活保護を利用している当事者の声も聴いた上で、慎重に議論を進めていくべきです。

 生活保護制度につながることができずに亡くなった方は、もはや声を出すことはできません。しかし、生きている私たちは、貧困ゆえに餓死された方、凍死された方、孤立死された方々の無念や絶望を想像することはできるはずです。貧困による死をなくすには何が必要なのか、何を変えるべきで、何を変えるべきでないのか。ぜひこうした観点から国会での議論を進めてください。ぜひ、政治の責任を果たしていただきたいと思います。



赤旗6/5付
生活保護法一部「改正案」に対する
高橋議員の反対討論

最後のセーフティーネットとされる生活保護に関わる重要な法案を、十分な審議も行わないまま、採決することに反対です。子どもの貧困対策はもちろん賛成ですし、それ自体十分な審議をするべきです。まして、本日午前、参考人からの意見を受けながら、午後には採決するというのはあまりに不誠実な対応であり、強く抗議をしたいと思います。

 生活保護法は「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き」とうたっており、「保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と明記されています。この基本理念ならびに制度の根幹である「無差別平等の原則」「必要即応の原則」もいささかも揺るがないことは審議の中でも確認されました。字面では何ら変えていないのに、中身はこの基本理念、原則を侵すものとなっていることに怒りを禁じえません。

 以下法案に反対する主な理由を述べます。

 まず指摘しなければならないのは、保護の申請を、申請書の提出が必要な行為と義務付けた新たな規定を設けたことです。現在でも、窓口で申請意思を示しても申請書を渡さない、あれこれと条件をつけてなかなか受理しない、といった水際作戦が行われています。時にそれが悲惨な結果を生み、申請権を侵害する違法な行為として裁判でも弾劾されてきたものです。今回の改正はこのような水際作戦を合法化するものであり、許されません。4会派提出の修正案もその本質を変えるものではありません。

 つぎに、福祉事務所の扶養義務者に対する調査権限の付与、また義務を果たしていないと判断した場合の扶養義務者に対する通知の義務づけは、保護開始の要件とされていない扶養義務の履行を事実上強いるものになります。親族間に不要なあつれきを生じさせ、親族に知られたくないからと、生活保護を受けることを断念させることにつながりかねません。

 なお、不正受給は厳正に対処していくことは当然ですが、不正受給とされる事案のほとんどは、アルバイト代の収入の申請漏れなどささいなミスによるものです。生活保護費との相殺や不正徴収金の懲罰的上乗せは、行うべきではありません。

 生活困窮者自立支援法は、生活保護の見直しならびに扶助基準の大幅引き下げと一体のものとして提出されました。生活保護基準を下回る仕事でも「とりあえず就労」という形で、生活保護からの追い出し、あるいは水際作戦のツールになるおそれがあり、賛成できません。

 また、今年5月に採択された国連の社会権規約委員会所見が、「生活保護の申請手続きを簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとる」ことを締約国である日本に求めていることからも逆行するものです。

 一般国民の生活水準にまで負の連鎖を生みだす生活扶助基準の切り下げは断じて許せません。基本理念の否定につながる生活保護法案は廃案とすべきことを強く求めて、討論を終わります。


◆ コマツヨイグサ(アカバナ科マツヨイグサ属) ◆
コマツヨイグサ 2013.5.5撮影
マツヨイグサの名の通り、宵を待って満開になり、明け方にしぼむ。一日花というより一夜花といった方が当たっている。しぼんだ花は左上方に見えるように赤っぽくなる。まわりにたくさんある小さな黄色のマメ科の花はコメツブツメクサ。

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