2020年12月19日土曜日

アメリカ大統領選 選挙人とは何者ぞ わけのわからない選挙制度

毎日新聞WEBから
ずっと以前からアメリカの大統領選挙のしくみがよくわからない。

長い選挙期間中、日本でもたくさんの報道が毎日のようにされ、選挙のしくみについてもときどきは解説され、ネット上でもWikipediaをはじめ多くの記事が載っている。

間接選挙であり、その州の有権者が投票した投票数が1票でも多い大統領候補者が、その州の決められた数の選挙人を総取り(例外が2州)して、全州で得た選挙人の合計で当選が決まる。

しかし、この程度の説明でははっきりいってさっぱりわからない。
赤旗 2020.12.16付

今回、ちょっと本気で調べて理解しようと努めたが、かゆいところに手が届くような解説がなかなか見あたらない。

わからないことは多々あるが、その最たるものは「選挙人」に関すること。

いったい選挙人とはなにものぞ。
実態はあるのか。
人間なのか。
公務員なのか特権階級か。
選挙人はどのようにして選出されているのか。
選挙人が大統領候補を選挙するとは具体的にどういう行動なのか。
そもそも選挙人の投票に意味があるのか(すでに一般有権者の投票で結果は決まっている)。
選挙人の投票は単なる儀式なのか。
・・・

ということで、今回の選挙でも、12月14日に選挙人の投票が行われたとき、いろいろアンテナを張っていたが、けっきょく選挙人が実際に投票箱に投票している映像や画像を見ることはできなかった。

選挙人は人間であることさえ確認できなかった。

そこで、わからないなりにこの問題について考えてみたい。


1.そもそもなんで間接選挙なのか

私はアメリカ大統領選挙が選挙人を介しての間接選挙になっているそもそもの理由を勝手に次のように理解していた(だれも納得のいく説明をしてくれないから)。

アメリカの領土拡大 (rekisi.info)
アメリカ建国(1776年)当時、領土は東部大西洋岸13州に過ぎなかったが、すぐにミシシッピ川以東の広大な土地を得て(1783年)、初代大統領大統領ジョージ・ワシントンが1789年に誕生している。

このときの具体的な選挙制度はよくわからないし、時代とともに制度も変化しているらしいので、ここからは私のざっくりした解釈である。

このような広大な土地で、だんだんと鉄道が整備され、新聞なども発行されてはいくが、ラジオやテレビ、ましてやインターネットなどはないわけで、情報の伝わり方には現代からは想像もできないほどの困難があったことは想像に難くない。

そんな中、大統領選挙だといって、誰それが立候補しているといっても、国のすみずみまで誰を選んだらいいのかの情報など行き渡るはずがない。
さらには直接選挙に必要なインフラの整備なども準備できなかっただろう。

それで考え出されたのが間接選挙というわけ。
各州で有力者だとか知識人などが選挙人に立候補する。
各選挙人候補者は、「私はA大統領候補を支持する」とか「私を信頼して誰に投票するかは私に一任して欲しい」とか訴えて選挙運動をする。
州内での選挙運動だから、一定程度可能だろう。

その州の個々の有権者は大統領候補者のことはさっぱり、またはよくわからないので、身近な州内のあるいは集落内の信頼できる(または利害関係?)選挙人候補者を直接選挙によって投票し、選挙人を選出する。

選ばれた選挙人は全州からニューヨークのどこかの投票所に集まり、そこでの投票行為により大統領が決定する。

以上が私の理解である。
つまり、選挙人は確かに人間であり、選挙運動によって州民によって選ばれたものであり、今度は自分の意思で大統領選挙において投票し大統領が決定する。

自分でいうのもおかしいが間接選挙とはこのようなもので、納得のいく解釈ではないだろうか。
ところが、このようにスパッとわかりやすく解説したものが見当たらない。
つまり、まったく私の誤解の可能性も高い。

2.わけのわからない現在の間接選挙

建国から20世紀中頃までは選挙人に象徴される間接選挙には合理的な意味があったと思うのだが、テレビや新聞が発達し、飛行機が飛び交い、ましてインターネットで瞬時に情報に接することのできる今の時代、どうしてこのような前世紀の遺物のような制度が残っているのか。

というか、なぜ現在のような意味不明の間接選挙に姿を変えて存続しているのか。

①選挙人とは何者で、どのようにして選ばれるのか

ネットを探し回って、ようやくBBC NEWS JAPANというWEBで次のような説明に出会った。

――ここから引用

どういう人が選挙人になるのか
合衆国憲法は選挙人について、連邦議会議員や連邦政府の現職公職者であってはならないと、それだけを定めている。そのため、民主党と共和党をはじめ、大統領候補を擁立する政党はさまざまな人を選挙人に選んできた。
引退した政治家――2016年にはビル・クリントン元大統領がニューヨーク州の選挙人となり、妻ヒラリー候補に投票した。クリントン元大統領は今回もニューヨーク州の選挙人になった。
州政府など地方自治体の公職者――ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は2016年と今回、同州の選挙人になった。
各州の党や団体関係者、活動家やロビイストなど――ここに分類される2人を下で紹介する。
このほか、大統領候補の推薦で選挙人になる人もいる。

引用ここまで――

選挙人とは実在する人間だった!
さらに選挙人の選ばれ方についてもわかったが、これはいったい何の意味があるのだろう。
愚の骨頂だ。

すべての選挙人は支持政党を鮮明にしている。
なにしろ大統領立候補者の所属する政党が選挙人を選んでいるのだから。
大統領候補者自身の推薦で選挙人になっている人もいる。
なんじゃこりゃという感じだ。

しかし、選挙人はその州の州民投票(一般投票)により最多得票を得た大統領候補者に投票するしか選択肢がないのだ。

まったくバカげた意味不明の制度だと言わざるをえない。

選挙人は人間ではあるが、単なるポイント(数字)に過ぎないのだ。
選挙人に人権はないのか!
どんな気持ちで選挙人になっているのだろう。

なお、Wikipediaでは、選挙人の選出方法については上記方法とはまったくちがった説明をしている。
つまり次のように書いている。

なお現在では選挙人は、全て直接選挙で選ばれているが、選挙人選出は州の権限であるため、連邦法上は必ずしも直接選挙で選出する必要はなく、歴史的には州議会によって選ばれていた例もある。

「選挙人は直接選挙で選ばれている」とはいったいどういう事実を指しているのだろうか。
そのような報道は聞いたことがない。

②選挙人による投票(選挙人投票)

とはいえ、ルールに違反して自分の支持する候補者に投票した選挙人が2016年に複数人いたらしい。
1948年以来のことだという(ちょっとくわしくは上記WEB参考)。

このような自分に誠実な選挙人を「不誠実な選挙人」と呼ぶらしいが、よほどこの選挙制度(選挙人総取りルール)の方が不誠実だろう。

選挙人による投票(2016年12月19日)
各州に割り当てられた選挙人数は単なる数字で十分ではないか、と以前から思っていた。
それが今回、選挙人は実在する人間で、じっさいに各州で投票行動までしていることがわかった。

右の写真は2016年時の大統領選挙で、選挙人がトランプに一票を投じようとしているものだ。

予算のムダ使いだし、茶番だし、あまりの滑稽さにあ然としてしまう。

アメリカ人とは何と愚かな人たちなのだろう。

3.一般投票だけで十分ではないか

ノースカロライナ州の郵便投票の投票用紙
一般投票とは、有権者つまり選挙権を持つ国民が大統領候補に一票を投じる行為で、11月の第1月曜日の翌日と決まっている。

これは自分の支持する大統領候補に投票するものであって、決してその州の選挙人に投票するものではない。

右の写真は、今回の選挙時に使用されたノースカロライナ州の郵便投票の投票用紙だ。
トランプとバイデンの名が見える。
同上
その後にもう一人「ドン・ブランケンシップ」と読める候補者がいる。
それぞれ副大統領候補とセットになっている。

この投票用紙のほぼ全面を写したものも同WEBに載っているが(右、赤丸は筆者による)、それをよく見ると、5人の大統領候補者が並んでいる。

トランプとバイデン以外の3人はいわゆる泡沫候補ということになるのだろう。

Wikipediaには今回の選挙には35人(副大統領とセットで考えれば35組)が立候補したとある。
驚くというか、それが当たり前のような気もするが、日本ではまったく報じられない。

ノースカロライナ州の投票用紙にはなぜ5人しか載っていないのかというと、他の30人はこの州では立候補していないからだ。

???

この辺のことはWikipedia参照のこと。

その他投票用紙にたくさんの欄があるのは、同時に上下院選挙の投票も行われるからだろう。

マークシート方式で、投票する候補者の左にチェックを入れるようになっている。

この投票用紙を見るまでもなく、すでにアメリカの大統領選挙は直接選挙になっているのだ。
それをわざわざ選挙人を介在させ、わけのわからない複雑な非民主的な方法を続けるのはいったいどうしてだろう。

さらに混乱するのは、Wikipediaに次のように書いていることだ。

今日、選挙人票をどう割り当てるか決めるために全ての州が一般投票を実施しているが、これは合衆国憲法や連邦法上、義務付けられているものではない。

はあ~?
一般投票はたまたま全州が同じ日にやっているだけで、それは義務ではない!
どこまでもいかげんな選挙制度だろうかと思う。

4.一般投票では勝っているのに選挙人投票(得た選挙人の数)で負けた?

NHK関連のWEBから
前回(2016年)のトランプ対クリントンの大統領選では、一般投票でクリントンがトランプに300万票近くの差をつけて1位だった。
しかし、得た選挙人数がクリントン232に対してトランプが306で、トランプが大統領になり、悪夢のような4年間が始まった。

さらにその前(2000年)のブッシュ対ゴアの大統領選でもゴアの方が一般投票で勝っていたのに、フロリダ州のゴタゴタの後、ブッシュが選挙人数で勝って、あの地獄のアフガン・イラク戦争をおっぱじめた。

アメリカ史上、このように一般投票で勝ったのに選挙人投票で負けた例が5例あるそうだ。
5例は少ないようにも思えるが、クリントンとゴアが負けた2つの例は最近のことでもあり、強烈な印象を残している。

このように民意が反映されない非民主的な選挙をいつまで続けるのだろうか。
そのわけは「AMERICAN CEBTER JAPAN」といったHPに「米国ではなぜ選挙人団制度を維持しているのか?」として書いてあったりするのだが、読んでもよく理解できない。

5.選挙制度見直しの動き

さすがにバカなアメリカ人でも、ここまでひどい選挙制度はなんとかしなくてはと見直しの動きが起こっている。

赤旗 2020.11.17付 赤線は筆者
見直しそのものは歓迎すべきことだが、「選挙人制度は実質的な意味を失う」としても、この期に及んで選挙人制度そのものをなくそうとしないそのこだわりはどこから来るのだろう。

と、いろいろわからないながらも書いてきてきたので、まちがった理解も多々あると思う。
また、こんな滑稽で非民主的な選挙制度にこだわり続けるアメリカ人をバカ呼ばわりしてきたが、日本の小選挙区制度のことを考えると、他国のことを笑えない。


 五島列島シリーズ㊵  ◆ ガジュマル(クワ科イチジク属)◆

ガジュマル 2018.5.12撮影 宇久島 前回とほぼ同じ場所

ガジュマルというのは単一種を表す名前なのか、イチジク属の何種類かを総称しているのかちょっと自信がないが、まあこの木はガジュマルでいいのだろう。前回のアコウもまったく同じイチジク属の木だった。ガジュマルという名は沖縄の地方名で、「絡まる」または「風を守る」からガジュマルとなったという説がある(Wikipediaより)。

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