2018年9月6日木曜日

今さらだが書かずにおれないW杯全日本男子サッカーの醜悪

いろいろ事情があって久しぶりの投稿になるが、まずはこれだけは書いておきたい。
6月にモスクワで行われたサッカーワールドカップにおける全日本男子のあまりにもひどすぎるたたかいについてだ。

予選リーグ最終戦において、日本は決勝リーグに残るために1点差の負けを保持しようと最後の10分間を時間稼ぎに費やした。
その戦法については日本のみならず世界中で賛否両論があったが、はっきり言わせてもらおう。
あれはもうスポーツではない。
醜悪の極みだ。
彼らはなんのためにサッカーをやってきたのか。

かつて、サッカーの時間稼ぎについてはいくつかの批判的な投稿をしてきた。
そして男子の見るにたえないプレイの多さに対し、女子サッカーのフェアーに徹した純なスポーツ精神にずいぶん惹かれた。

その女子サッカーも2012年のロンドンオリンピックにおける佐々木監督と澤、宮間の共謀により、予選リーグ最終戦で引き分けねらいの醜いたたかいをやってのけた。
一気に女子サッカー熱も冷めてしまったのだが、今回の男子は1点差の負け狙いだ?!
しかも、同時進行の別のゲームの結果頼み、他力本願!

このようなゲームをさせないための予選リーグにおける2試合同時スタートという趣旨からいっても、絶対に考えられない作戦だ。
「究極の選択」と西野監督は言ったが、愚かとしか言いようがない。
サッカーというスポーツを究極までおとしめた選択だ。
結果、全日本が優勝したとしても、決してこの汚点は消せるものではない。

この件について、メディアはどう報道したか。
私の地元の中国新聞と赤旗の2紙を紹介する。

まず試合翌日(6/30)の中国新聞。

1面の中見出しは 苦渋の采配 執念実る とあり、肯定的だ。
また、1面のコラムは下の通り。

「柔道なら確実に『指導』が出ていただろう」
「異国のスタジアムが大ブーイングに包まれたのは、やむを得まい。被害者は観客である」
などと批判的な論調もあるが、最後は「このままでは、ちょっと後味が悪い。最後まで粘り強く戦う『サムライ』本来の姿を取り戻して欲しい」とエールを送っている。

一般紙ならこんなものだろう。

赤旗は一面(6/30)で 全力プレーなくしてフェアプレーなし の見出しで以下のように書いた。
赤旗 2018.6.30付
「この対応は、スポーツの原点を大きく外れます。いついかなるときも『たたかい』を放棄すれば、これはスポーツではなくなります」
「終盤の日本の選択は残念ながらサッカーの大切な心を見失ったに等しい」
と厳しく批判した。

また一面コラムでは、国会での「働き方改革」法案の審議から強行採決(この試合の日!)まで徹底した無法を繰り広げた安倍政権を批判するために、冒頭次のように今回の件に触れた。
赤旗 2018.6.30付
「最後はフェアプレーポイントに救われたというのも皮肉です」とあるが、そのフェアープレーポイントをねらっての時間稼ぎだったのだ。
何重にも許しがたい行為といえる。

赤旗は追い打ちをかけるように翌日にも 日本の「時間稼ぎ」再考 として次のような論評をスポーツ面に載せた。

「行動規範」の原点に照らして

「勝つためにプレーしないのなら、相手をだまし、
見ている人を欺き、自分自身にうそをついている」

ワールドカップ(W杯)ロシア大会グループリーグ第3戦のポーランド戦(28日)で、日本が見せた終盤の時間稼ぎに波紋が広がっています。
この間題を改めて考えてみました。

「素直に喜べぬ」

「こういう場所(16強)に来たにもかかわらず、素直に喜べない状況をつくってしまったのは申し訳なかった」

試合から一夜明けた29日、西野朗監督は選手、スタッフ全員のミーティングの席で、ポーランド戦の時間稼ぎの決断をこうわびたといいます。

問題の場面は、0-1で迎えた後半の残り約10分間のこと。
ベンチの指示の下、日本のDF同士で「時間稼ぎ」のボール回しを始め、会場は大きなブーイングに包まれました。

日本がこうした行為に出たのは後半29分、他会場でコロンビアがセネガルをリードし、このまま推移すれば、日本がわずかな差(警告の枚数などのフェアプレーポイント)で決勝トーナメントに進出できる状況となったからです。

しかし、ここにはいくつかの見過ごせない問題が浮かび上がってきます。

一つは、他の試合結果が動く可能性がある中、日本はこのままゲームを終わらせようとしたことです。
これは結果がどう転ぶかわからない危険なかけです。
セネガルが同点に追い付いていたら、日本は予選敗退となっていました。とても最善の策とも次善の策にもなりえないものです。
日本があの時点でやるべきことは、もう一つの試合結果にかかわらず、自分たちの手でポーランドに追い付き、勝利を目指し、活路を開くことだったはずです。

西野監督は試合後、苦しい胸の内を吐露しています。

「間違いなく他力の選択をしたこと。負けている状況をキープしている自分、チームに納得がいかない」。
監督自身もこの選択を「不本意」としていた部分があったというわけです。

スポーツの本質

もう一つのより本質的な問題は、これほどの極端な時間稼ぎをし、敗戦を受け入れるという姿勢が、スポーツのあり方にとって大きな問題を含んでいるということです。

国際サッカー連盟(FIFA)には、すべてのサッカー関係者に関わる「フットボール行動規範」があります。
その最初にあるのが「勝つためにプレーする」です。

「勝利はあらゆる試合のプレーする目的です。
負けを目指してはいけません。
もしも勝つためにプレーしないのならば、あなたは相手をだまし、見ている人を欺き、そして自分自身にうそをついています。
…全力を出さないことは、相手への侮辱です。
試合終了の笛がなるまで、勝つためにプレーしなさい」

日本は残り10分あまり勝利を目指さず、16強入りを目指していました。
しかし、それは「行動規範」の精神を踏みにじることになります。

スポーツはどんなときも全力をつくし、勝利を目指すことにその大きな意味、価値があります。
それを全うしないことには、スポーツ足りえないといってもいいのです。

「相手をだまし、見ている人を欺き、自分自身にうそをつく」。
今回の16強入りに「もやもや感」が残るのは、日本のたたかいに、これに似た思いが湧いてくるからです。
それは当事者である監督自身も感じていることです。

いま一度、この規範の原点に立ち返ったたたかいを強く望みます。
(和泉民郎)
――以上赤旗2018.7.1付から引用

まあよくぞ書いたものだと思う。
賛否両論ある読者を忖度することなく、赤旗は立派な主張を署名入りで堂々と表明した。
私も当然ながら100%同意する。

ところで不可解なことがある。

私も尊敬しているサッカージャーナリストの大住良之の論評だ。
彼は赤旗に月に一度の連載コラムをスポーツ面に投稿している。
彼が今回の件でどのような主張をするだろうかととても楽しみにしていた。
そして7/12に掲載されたコラムは意外なものだった。

「攻めるな」の指示 みんなが考える機会に

「Play to win.」

1996年1月に国際サッカー連盟(FIFA)が「行動規範」を発表しました。
その第1項に掲げられていたのがこの項目でした。
勝つために全力を尽くすことは、フェアプレーの最も根源的な条件だと思います。

さて、ワールドカップ(W杯)のポーランド戦での日本代表・西野朗監督の指示と、それに従って追加タイムを含め、10分間近く日本がボールを回し、ポーランドも取りに来なかったことについて、いろいろな意見が出ています。

本紙の和泉記者がフェアプレーの観点から批判しているのは、まさに正論であると思います。
その一方で、「戦略のひとつ。当然のこと」と割り切る意見もあります。
「せっかくがんばった日本代表を非難するな」というファンの思いも理解できます。

2012年のロンドン五輪でなでしこジャパン(女子日本代表)が南アフリカを相手に意図的に得点せず、準々決勝の日程が有利な2位狙いにしたときには、私ははっきりと批判しました。

その立場で言えば、今回も批判すべきなのかもしれません。
しかし今回はなぜかそうした気持ちは起きませんでした。
大きなものがかかったW杯だからではありません。
西野監督と日本代表が、大きすぎるほどのリスクを背負ってこの決断を下したからです。

西野監督は「攻めるな」と指示をしました。
しかし相手のポーランドが2点目を取ろうと果敢にきていたら、あの形にはならなかったでしょう。
それが第1のリスクです。

さらに大きなリスクは、残り時間でコロンビアとたたかっているセネガルが1点を取ったら、すべてが無に帰す点です。
同点ゴールを狙わなかった西野監督と日本代表は世界中からばか呼ばわりをされたでしょう。

あのとき記者席から見ていて感じたのは、「何てすごいギャンブルをするのだろう!」という、驚きと感嘆でした。

もちろん、フェアプレーの観点からすれば良いことではありません。
Jリーグでも攻撃的サッカーを貫いてきた西野監督自身、それを強く感じていたでしょう。
しかしW杯の指揮を任された代表監督としての判断は「攻めるな」だったのです。

決して、安全なところにいて試合をもてあそんだのではありません。
自分たちにできる限りのことをやり尽くし、白刃を踏む思いでこの決断をした西野監督と日本代表を、私は非難する気にはなれないのです。

今回のことば「フェアかフェアでないか」だけでは論じられないと感じています。
こうしたケースはいままでになく、みんなが考える機会にもなります。
それが「フェアプレー」をより成熟した考えに導くことになるとも思うのです。

サッカージャーナリスト 大住良之
――以上赤旗2018.7.9付から引用

なんだこれは?!
「西野監督と日本代表が、大きすぎるほどのリスクを背負ってこの決断を下したから」批判する気持ちになれない?
「あのとき記者席から見ていて感じたのは、『何てすごいギャンブルをするのだろう!』という、驚きと感嘆でした」?

大住良之がこのようなことを言うとはガッカリもいいところだ。
彼もこの論評で汚点を残したのではないだろうか。

「なんてすごいギャンブルをするのだろう」と感嘆するのではなく、「なんて愚かなことをするのだろう」と驚いてほしかった。

大住は最後に「みんなが考える機会に」ともっともらしいことを書いているが、サッカー関係者を含め、どれだけの人がどれだけの機会にこの件について現在まで考えてきたのだろう。
私の耳にはほとんどなにも聞こえてこない。

赤旗も「日本代表 成果と教訓」と題し、先の赤旗記者の和泉民郎が7/7と7/8の2日に分けて論説を書いていて、その最後を次のように締めくくっている。
赤旗 2018.7.8付
ここで注目したのは、西野監督が「後悔している」と反省的に語ったということだ。
試合翌日のミーティングで選手たちに監督が謝罪したということは和泉記者の「再考」にも書かれていたが、「後悔している」という具体的記事はまだ目にしていない。

そこでちょっとネット検索してみるとすぐに見つかった。
知らないのは私ばかりだったか?

――ここから引用ライブドアニュース 2018.7.4

16強敗退に責任痛感…西野監督が語った2つの「後悔」

カザンで“最後”の取材対応を行った西野朗監督 
ベスト16敗退に終わったロシアW杯決勝トーナメント1回戦のベルギー戦(2-3)から一夜明けた3日、日本代表はベースキャンプ地のカザンに戻り、西野朗監督が報道陣の取材に応じた。

2大会ぶり3度目のベスト16という結果には「目標にしていたところではある。最低限の目標にはしていた」としながらも、2-0から3失点で逆転負けしたベルギー戦について「チームとすれば良いコンディションで臨めていたと思うし、実際、パフォーマンス的にもかなり戦えるゲームができたと思う。さらに勝てる状況があったわけで、最終的に勝ち上がれなかったのは少し残念ではある」と悔しさをにじませた。

後半24分、29分の連続失点で同点に追いつかれ、後半アディショナルタイムに決勝点を献上。2点差をひっくり返される展開に「ベンチワーク、私の動きも影響すると思う。そういう意味では(日本代表に)足りない部分の大きな一つではないかと思う」と、自身の采配についても反省の言葉を口にした。

後半3分、7分の連続ゴールで2点を先行する展開から果敢に3点目を狙いに行った。その理由について指揮官は「グループリーグ3つ目のゲームの取り返しというか、そういう気持ちもあった」と明かした。

グループリーグ最終戦のポーランド戦(0-1)で日本は終盤の約10分間、リードされているにも関わらず、後方でパスを回して時間を稼ぎ、他会場の結果にグループリーグ突破の命運を委ねた。その采配は国内外で賛否両論を招き、多くの批判も浴びた。このことがベルギー戦の采配に影響した。

4月の就任からわずか2か月で挑んだW杯。報道陣から「監督として喜びを感じた場面はあったか」と聞かれた西野監督は「ないですね」と答えた。その一方で、「後悔していることは」という質問には「ありますね」と即答。「3つ目の試合(ポーランド戦)の戦い方とか、昨日(ベルギー戦)の戦い方とか、それは後悔します」。そう率直に認め、自分自身の責任を痛感している様子だった。

(取材・文 西山紘平)

ここまで引用――

この西野監督の反省の弁はどこまで広く認知されているのだろうか。
毎日熟読している赤旗でも見た覚えがない。
これこそが大住良之や赤旗が述べている「みんなが考える機会」であり、「議論大いに」の出発点ではないか。

スポーツマンとてアンフェアーなことをついやってしまうことはよくあることだろう。
どころか、昨今のスポーツ界のようすときたら、目を覆わんばかりのアンフェアーのオンパレードだが。
しかし、その失敗をしっかり反省し、次に生かすことができるのであればその選手や指導者をいつまでも批判したりはしない。

女子サッカーの元佐々木監督は反省の弁を述べることもなく、臆面もなくロンドンオリンピック後も監督を続けた。
澤も宮間も同様だ。
だから女子サッカーには愛想が尽きたわけだが、この3人がどうやら退場し、新生女子サッカーが始動し始め、U20やアジア大会で大活躍(両方とも優勝)するのを見て、私も気分良くまた彼女たちを応援している。

西野監督はW杯後の全日本監督を辞退した。
ここにも彼のポーランド戦での後悔の表れがあるのだろうか。
彼なりのけじめをつけたのだろうか。
そうであれば彼は許せる。

選手の方だが、当日やその後の言動を見る限り、今回の件の本質を理解していると思われるものは一人もいない(私の知る範囲において)。
なさけないの一言だ。


◆ ヒメハギ(ヒメハギ科ヒメハギ属)◆
ヒメハギ 2013.5.27 深入山
5年も前に、広島ではちょっと知られた深入山という山のふもとで見つけた小さな花。当時何の花かわからず、かなり調べたのだが結局わからずじまいで終わっていた。つい先日、NHKプレミアムで放映していた田中陽希の「日本三百名山一筆書き グレートトラバース3」の第5集を見ていて、中国地方の蒜山を登っている場面でこの花が出てきた。思わず「これかー!」と叫んでいた。5年ぶりにのどに引っかかっていた魚の骨が取れた気分。

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