前々回の増税時には、景気動向が悪いからといって決まっていた増税時期を延期するため国会を解散した(2014年11月21日)。
延期の是非を国民に問うためという理由だが、それで自公が圧勝して、増税は延期された。
なんだか漫画ちっくだ。
それで前回の増税時には、同じような理由なのに解散せずに法律を変えて増税を再延期した(2016年6月)。
どういうこと?
そして今回なのだが、前回より景気動向は悪いと思えるので、きっと衆議院を解散して3度目の延期をするだろうなとふんでいたが、特に大きな動きもないまますんなり10月1日を迎えて増税に突入した。
どういうこと?
しかも、軽減税率(実際は税率据え置き)、キャッシュレスによるポイント還元、食品持ち帰りか店内飲食かによる税率のちがい、プレミアム突き商品券などなど、ほとんど理解不可能な複雑さで、現場は大混乱。
そのうえ、4年後には中小企業にとって地獄のインボイスが待っている。
それで安倍が言うには、増税分はすべてお返しします。
どういうこと?
さらに不可解なことは、3%が5%に、5%が8%、そして今回10%への増税だが、いつだって国民の増税賛成が4割もあるってこと(もちろん反対が賛成をいつも上回ってはいるが)。
とても自虐的だ。
いったいどういうこと?
ちまたに言われていることは、増税しなければ社会福祉が成り立たなくなって自分たちが困ることになるから。
政府の宣伝が功を奏している。
「少子高齢化が進んで社会福祉が破綻します」
「増税分はすべて社会福祉に使います」
これが消費税導入時からの政権側の常套句だ。
これに国民はすっかりダマされ続けてきたってことか。
かつて小泉純一郎首相は記者会見で次のように述べた。
「まだまだ削るべき無駄な予算はあり、その改革が先だ」「『もうこれ以上、予算を削減するのはやめてくれ』というときに初めて財源がないから消費税率を上げるというなら分かる」
つまり、社会保障費を抑制し、国民生活を痛めに痛めつけて消費税増税やむなしの世論をつくろうということだ。
じゃあ、それで社会保障は良くなってきたのか。
赤旗 2019.9.10付 |
介護保険制度ひとつとっても、要支援1と2は2014年から介護保険が使えなくなり(訪問・通所介護)、今は要介護1と2まで制度からはずそうと画策されている。
特別養護老人ホームの入居資格は2015年に要介護1以上から要介護3以上になった。
介護保険の自己負担は1割だが、それでも払えないから利用できない人がいるというなかで、所得によっては2割、3割負担も検討されている。
基礎年金はマクロ経済スライドにより20年後ぐらいには3割も目減りする。
生活保護の扶助費は減らされ続け、昨年からも3年計画で減額が進んでいる。
こういった事実を国民が知らないということはないと思うのだが、それでも消費税を上げなかったらますます社会保障は悪くなるから困るのでやむを得ず賛成ということなのだろうか。
消費税は大企業と大金持ちの減税のために使われてきたんだよ。
この事実は消費税が導入されて以来指摘されてきていることで、今さらここで声を大にしていうのもおかしいが、それでも言いたい。
上図のようなグラフは何度も何度も毎年改定されて各種媒体に掲載されている。
消費税が導入された1989年を起点として、消費税は5%に増税されるなかで、法人税はずっと減税され続けてきた結果を示している。
消費税で増えた税収は、法人税等の減収分の穴埋めに使われていることが明らかだ。
*法人税は国税であり、地方税としては法人住民税と法人事業税がある。
この3つを合わせて法人3税とか法人税等とよんでいる。
このようなグラフを知っている人は、あーまたかってなもんだが、ひょっとして一度も目にしたことがない人もいるかもしれない。
そんな人が消費税増税賛成4割のかなりの部分を占めているのかも。
法人税は何も大企業に限ったことではないではないかという人がいるもしれないが、中小企業の多くは(6~7割)赤字企業で法人税を払っていない。
これらの赤字企業にとって、法人税が減税されてもなんの恩恵もない。
また、大企業の法人税率は、研究開発減税、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入などいくつも減税装置があって、実質中小企業よりかなり低いものになっている。
赤旗 2018.4.20付 |
赤旗 2014.6.1付 |
赤旗 2019.9.25付 |
赤旗 2019.6.4付 |
ちょっと乱暴な言い方をすれば、この積み上がった内部留保は、一般庶民からむしり取った消費税をため込んだものといえなくもない。
話しは最初の図(グラフ)にもどるが、2011年の消費税がまだ5%の時代までしか載っていない。
その後、消費税が8%となった直近のデータはどうなっているか。
最近赤旗に新しい図が載った。
赤旗 2019.9.30付 |
法人税率も2011年の25.5%から23.9%、23.4%、23.2%とさらに下がってきているのだが、その減収額は逆に減ってきている。
アベノミクスのもと、大企業は空前の経常利益を上げていると言われるが、ここ数年、法人税減収額が下がっている傾向にあることは私にはよく理解できない。
この赤旗の最新図の良いところは、同時に「所得税・住民税の減収額(累計も)」を併記しているところだ。
そこで、所得税率・住民税率の推移をまとめてみた。
主にWikipediaを参考にして太陽が作成 |
累進課税については誤解している人がかなりいて、例えば1974年で見ると、所得税と住民税を合わせた最高税率は93%だったが、であれば、1億円の課税所得の人は9300万円が税金で取られるのかと思っている。
ちょっとした有名な人までがテレビなどでそのようなことを言ったりするのでびっくりするほどだ。
日本の累進課税は超過累進課税といって、その課税所得区分を超えた分だけその税率を当てはめるという意味だ。
1974年の所得税でいえば、最高税率75%というのは、8000万円を超える部分だけに当てはめるということ。
つまり1億円の課税所得の場合、75%の税率がかかるのは2000万円に対してのみ。
私のようなシロウトがここで税金の解説をするのもおかしいのでやめるが、大金持ち、中流、低所得と4段階(ちょっといいかげん)の課税所得の場合の実質の課税額と課税率をまとめてみた。
太陽作成 |
このような面倒くさい作業をなぜしたかというと、赤旗の図の中に、所得税・住民税の減収累計の棒グラフが載っていたからだ。
というのは、所得税も住民税も富裕層とか貧困層に限らずすべての所得のある人に関係したものであって、これらの減税による減収は富裕層だけが原因とはいえないのではないかということだ。
つまり、消費税による増収分が法人税の減収分の穴埋めに使われたということは理解しやすいが、富裕層の所得税・住民税の減税による減収の穴埋めに使われたというのはすぐには理解ができない。
表を見ると、1974年の所得税最高税率75%が今では45%になった(住民税は18%から10%)のだから、金持ちはずいぶん得をしたなという印象を持つが(実際得をしたわけだが)、この稿で取り上げているのは消費税が導入された後のことだ。
消費税は1989年に導入されたのだから、その時点を起点に表を見てみると(表のほぼ右半分)、これはなんとも微妙な数字だ。
そこで、1989年と今年のちがいがわかるように表を作り直してみた。
太陽作成 |
200万円の人は4.9%の減税で富裕層と比べてやや少ないぐらい。
が、減税額は590万円と10万円で大きくちがっている(当然ともいえるが)。
住民税の方はかなり問題がはっきり出ている。
つまり、1億円の富裕層の4.7%の減税に対して、中間層・貧困層(といっていいか?)は両者とも1.2%、3%の増税になっているのだ。
そして所得税と住民税を合わせたら、3者とも減税になってはいるが、その減税率が1億円の10.6%に対して、500万円は1.3%、200万円は1.9%と大きなちがいが浮かびあがった。
減税額で比べると、年収1億円(課税所得)の富めるものは1059万円も減税されたのに、500万円のものは7万円、200万円の貧者は4万円しか減税されていない。
消費税の最大の問題点は、税の最大原則である累進制の真逆を行く逆進性の税であることだ。
貧乏人からむしり取った税金を富裕層に移すという非人間的なしくみだ。
そして富者と貧者の経済的格差はますます広がっていく。
消費税導入以来、1人の首相が2度も消費税を増税したのは安倍しかいない。
これほど非人間的な総理大臣がかつていただろうか。
赤旗 2019.10.3付 |
「赤旗のグラフを見て、消費税の増収分は富裕層の減税のために使われたという見解は、正確ではないとしてもそんなにまちがってもいないということになるのかな」と書いたが、どうもすっきりしない。
9月30日付のグラフは「大企業・金持ち減税穴埋め」という記事本文の中見出しの中で使われているものだし、一昨日(10月9日)付の赤旗には、志位委員長の代表質問の記事中にある同様のグラフの見出しに「消費税は法人税・所得税減収の穴埋めに消えた」とある。
法人税減収の穴埋めに使われたという従来のグラフには何も問題を感じていないが、今回の「所得税・住民税の減収の穴埋め」というとらえ方にはやはり違和感が残る。
というか、やはり正確ではなく、誤解を与えかねないものではないだろうか。
私の場合、数字をあれこれ分析して無理にでも納得しようと試みたわけだが、投稿した直後から気になっていたので補足をしたい。
所得税と住民税を合わせた税率の推移は、たしかに富裕層が8倍以上(1億円と500万円の比較の場合)も恩恵を受けている(額でみると150倍以上)のだが、富裕層の人数は中間層・貧困層の人数に比べて圧倒的に少ないのではないだろうか(比喩的によくいわれる1%)。
つまり、減税額で考えると、減税率の低い中間層・貧困層は個々の減税額は小さくてもその層全体の減税額総額は富裕層の減税額総額と比べてどうなのかという疑念が生じる。
この疑念を明らかにする統計やグラフは赤旗ではまだ目にしていない。
したがって、本投稿の「そろそろ結論だが」以下の文は削除しておきたい。
ただし、次のことは事実だろう。
消費税が導入されるずっと以前から「直間比率の見直し」ということが主に財界・富裕層から言われてきた。
直接税(所得税や住民税)を減らして間接税(消費税など)を増やそうという意味だ。
そして、消費税が導入される前から直接税は減税が行われ続け、1989年から財界・富裕層念願の消費税が導入されて直間比率の見直しは完遂した。
要するに、消費税導入以後は、直接税での税収を間接税での税収に置き換えていくという歴史になっている。
そういう意味で、確かに富裕層の減税のために消費税は生まれ、成長してきた。
そして、経済同友会代表幹事の桜田謙悟は、安倍が議長を務める「全世代型社会保障検討会議」の初会合後の記者会見で(9月24日)、消費税率は17%必要と主張している。
五島列島シリーズ⑮ ◆ オカオグルマ(キク科シオン属)◆
オカオグルマ 2018.5.5撮影 福江島鬼岳 |
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