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2021年3月21日日曜日

2020年の日本映画と各種映画賞に思う

昨年は映画館へ10回通った。

10年ぐらい前までは年に40~50回足を運んだものだが、結果的にお金を払ってわざわざ映画館まで行って良かったといえるような映画は本当に少ないし、2年もしないうちにテレビで見れるなどと思って、以来ぐんと映画館に行くことが少なくなった。

この1年間で見た邦画は「Hukushima50」「中島みゆき 夜会Vol20 Little Tokyo」「スパイの妻」「鬼滅の刃」の4本。

「Hukushima50」は観たいとは思わなかったが、妻が行きたいというので付き合った。
俳優陣といい映画のつくりからして大作といえる映画のようだが、大きな違和感というか、しらけた気分が残った。
中島みゆきの映画は、中島みゆきという歌手に大きな魅力を感じていて、彼女の自作自演のような映画なら、きっとすばらしいものだろうと思って観に行った。
なぜか割引がなくて、2600円もした。
こんな高い映画を観たのは初めてだし、これから先もないだろう。

な・の・に、独りよがりの自己中映画でつまらなかった。
金返せと言いたい。

映画「ミッドナイトスワン」から
「スパイの妻」はベネチア映画祭で銀獅子賞を取り、内容的にも絶対観に行こうと思っていて、結果満足した(拙者ブログ参考)。

「鬼滅の刃」はまったく関心はなかったのだが、このコロナ禍において日本映画史上最大の興行収入を得る大ヒットになり、妻も息子も観に行って大絶賛するし、そん
な見えない圧力に背中を押されるように遅ればせながら今年に入って観に行った。
結果、思っていた通りどうでもいい映画だった。

という感じだが、今回このブログを投稿しようと思ったきっかけは「ミッドナイトスワン」にある。

この映画は、封切りの間は存在そのものを知らなくて観ていなかったのだが、昨年末のある日、ひょんなことからYouTubeの過去最長という予告編を見て興味を持ち、また、YouTubeで過剰なほどの感動レビューや内田監督などとの対談動画などをいくつも見て(例えばこれまたはこれなど)、ますます惹かれてしまい、ついには絶対観たい!! と思うようになった。
観てもいないのに、家族や友人・知人に「これは絶対おもしろいぞ」と宣伝したものの、すでに上映は終わっていて、観ることができない!

それで今年に入って映画のいろんな賞が発表されてきた。

最初に目にしたのがキネマ旬報ベストテン
日本映画の部は以下の通り。

 第1位 「スパイの妻<劇場版>」
 第2位 「海辺の映画館-キネマの玉手箱」
 第3位 「朝が来る」
 第4位 「アンダードッグ」
 第5位 「本気のしるし<劇場版>」
 第6位 「37セカンズ」
 第7位 「罪の声」
 第8位 「喜劇 愛妻物語」
 第9位 「空に住む」
 第10位 「アルプススタンドのはしの方」

「スパイの妻」が第1位になったことは納得する。
第2位以下はすべて観ていない。

ここで意外だったことは「ミッドナイトスワン」がベストテンに入っていないことだった。
なんと14位。
部門賞において、草彅剛が主演男優賞で2位、服部樹咲が新人賞で2位というのが精一杯。
しかし、読者選出日本映画ベスト・テンでは作品として2位に入っている(1位は「天外者」)。

作品としての「ミッドナイトスワン」はキネマ旬報では欄外として扱われた。
キネマ旬報の映画プロの目を信じるべきか、キネマ旬報読者の目を信じるべきか。

まあ私は実際観ていないわけだから、なんとも判断しようがない。
それにしても14位とはね。

次に目にしたのがブルーリボン賞

ここで選出された作品賞は「Hukushima50」。
「ミッドナイトスワン」関係の受賞は主演男優賞の草彅剛のみ。

ノミネートされた作品が20あって、その中には入っているのだが、位置づけはわからない。
草彅が主演男優賞に選ばれたことだけでも良しとすべきか。
また、監督賞に内田英治が、新人賞に服部樹咲がそれぞれノミネートされている。
服部樹咲

ここで冒頭に書いた「Hukushima50」の違和感等について少し述べておく。

監督、俳優陣、その他関係者はみんなフクシマ応援という強い意思を持って作品づくりをしただろうことは想像に難くない。
しかし、いくら放射能汚染から市民を守るために命がけで働いたといっても、所詮彼らは東電社員という加害者の一員なのだ。
ざっくりいえば、加害者がヒーローになってもいいのかということだ。

映画から少し離れるが、NHKの「逆転人生」という番組があって、私もテーマに惹かれたときはときどき見たりする。
3月1日放送は「あの日“加害者”になった私 東電社員たちの10年」。

NHKのHPで次のように番組紹介をしている。

原発事故で暮らしが一変した福島に、賠償や除染のため赴任した3人の東電社員たち。賠償相談窓口で浴びせられた罵声。基準超えの放射性物質が検出された農村の現実。3人の東電マンは、被災者の怒り、悲しみ、優しさに触れながら、復興のために全力で走り続けた。彼らはやがて、福島の人々と固い絆で結ばれるようになる。

直接原発関係の仕事に携わっていたわけではないが、東電社員としての加害者としての責任感、その責任の一端を少しでも果たそうと努力し続けた10年間は立派だと思う。
しかし、だからといって彼らをこのような番組に出演させ、「逆転人生」などと銘打って感動を視聴者に押し付けるようなことをしてもいいのだろうか。
私などは感極まって涙を流す彼らを見てもしらけてしまうだけだ。
東電経営陣や幹部たちに見せるだけで十分だ。

福島第1原発事故によって人生を狂わせられ、今なお3万とも8万とも言われる避難者、がんやさまざまな疾病の苦しみ、増え続ける原発関連死、生業を失って経済的な苦境に立つ人々、今も肉親の行方不明者を捜し続ける人たち、子どもたちにとっての10年、家族の移り変わり、そして彼ら彼女らとかかわって生きてきた人々の生きざま… いくらでもドラマはあるではないか。
事実、NHKのみならず民放においてもそれらを題材に優れたドキュメントやドラマをたくさん作っている。

例えば今日深夜放送予定のこれ。
赤旗 2021.3.21付
なのに、Hukushima50か?

話を戻す。

以降さまざまな映画賞があったようだが、そのあたりは飛ばして最後は最も権威ある(?)日本アカデミー賞だ。

3月19日の午後9時からテレビで各賞の最優秀賞発表、授賞式の中継があり、私はYouTubeのライブ配信でドキドキしながら最後まで見てしまった。

新人俳優賞は6人が選出されていて、その中から最優秀賞は特に選ばないようなので、6人の1人である服部樹咲はみごとに新人賞に輝いたことになる。

最優秀監督賞は「Hukushima50」の若松節朗が選出され、ミッドナイトスワンの内田英治は優秀監督賞5人の1人ではあったが最優秀は逃した。

最優秀主演男優賞は、小栗旬(「罪の声」)、草彅剛、佐藤浩市(「Hukushima50」)、菅田将暉(「糸」)、二宮和也(「浅田家!」)の5人がノミネートされていて、雰囲気的に二宮和也なのかなと思っていたところ、草彅が選出された。

映画「ミッドナイトスワン」から
ここでちょっとうるっときた。

最後はクライマックスの最優秀作品賞発表。

ここまでの最優秀賞の発表で、「Hukushima50」が最優秀助演男優賞、最優秀監督賞、最優秀撮影賞、最優秀美術賞、最優秀照明賞、最優秀録音賞の6部門を獲得していて、最後の最優秀作品賞も取るだろうなという雰囲気が漂っている。

ライブ配信なので、視聴者のチャットが矢継ぎ早に流れていく。
ミッドナイトスワンになって欲しいが、たぶんHukushima50だろうなという希望と諦めが交錯したものが多い。
頼む、ミッドナイトスワン、お願い、ミッドナイトスワン、という祈りに似たようなチャットで、私も同調してしまってドキドキしてくる。

それもそのはず、Wikipediaの「ミッドナイトスワン」をみると、

報知映画賞ではノミネート時点で、作品賞・主演男優賞・監督賞・助演女優賞・新人賞の5部門において読者投票1位を獲得した。

とある(今回調べていて発見)。

観客目線では圧倒的に「ミッドナイトスワン」推しなのだ。

その祈りに似たファンの期待に応えて、ミッドナイトスワンが最優秀作品賞に選出!!!

涙こそ流れなかったが、溜飲が下がる(なんせブルーリボンで14位)というか、晴れ晴れとした気持ちになった。

日本アカデミー賞受賞の3人
まったくまだ観てもいない映画なのにこのような心持ちになるなんて、自分でも変だと思う。
きっとすぐにでも再公開が始まるだろうから、今度こそ見逃さずに映画館へ足を運ぶぞ、と決意したしだいだ。


◆ プルヌストリロバローズムント? 

プルヌストリロバローズムント? 2015.4.1撮影
いつもの川沿いの散歩コースに毎年花開くこの樹木。園芸種にちがいない。エッジの写真検索にかけてみると、すべて英語のサイトが表示される。最も似ているなと思われるのがプルヌストリロバローズムントで、別名「ダブル開花チェリーアーモンドシュラブ」。詳しいことはわからない。また、これで正解なのかも自信はない。

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