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2020年11月27日金曜日

「自助・共助・公助」と言い続ける菅首相の無知蒙昧

自民党総裁選に勝利 2020.9.14
管政権が発足してはや2カ月が経った。

彼の長い官房長官時代(なにしろ歴代最長の安倍政権と同じなのだから)、「その指摘はまったく当たらないのでまったく問題ない」の一言ですべてを乗り切った前代未聞の語るべき言葉を持たない政治家ではあったが、首相になって改めてそのことを見せつけている毎日だ。

管政権は、「令和おじさん」のイメージの延長か、苦労人、パンケーキおじさん? といったマスコミが振りまいたイメージによってか74%という驚くべき支持率でスタートした。

ちなみに、支持率30%を切った安倍政権をそのまま継承した管政権がいきなりの高支持率という危うさを、中島岳志は「私には確信がある。全体主義を支えるのはこの層(安倍不支持から管支持に変わった3000万人:太陽注)である」と週刊金曜日(2020.9.25号)に書いている。

この支持率の内訳を見ると、かなり深刻な様相が見てとれる。
つまり、全体の支持率74%に対し、18~29歳の支持率は87%なのだ。

この点についてはとても興味ある問題だが、今回はこれ以上触れない。

管は組閣を終え、首相就任以来初めての記者会見(9月17日)で、この内閣のキャッチフレーズは「国民のために働く内閣」だといった。
あまりにあたりまえの話にずっこけてしまう。

「カレーがかけてあるカレーライス」と言っているようなもので、キャッチフレーズからして無能さを暴露している。

<追記 2020.12.5:「国民のために働く内閣」を掲げるということは、今までの安倍政権は国民のために働かなかったということを自ら白状しているようなもの。実際、安倍内閣は自分とお友だちのために働く内閣だった>

しかしまあ、このキャッチフレーズは前日の最初の閣議で決めた基本方針なので、内閣そのものの無能さをいきなり証明したわけだが。
それにしても一人ぐらいそれはさすがにやめておこうよという大臣はいなかったのだろうか。

私がこの稿で書きたかったことは、管が総裁選のときから言い続けている「自助、共助、公助」だ。
総裁選での第一声としていきなり「自助、共助、公助」を胸はって言い出すとは。
この時点で多くの人はあ然としたのではないだろうか。

それだけではない。
このスローガンというか、政治信条というか、この時期に、つまりコロナ禍にとても口にはできないような言葉を何度も何度も、所信表明演説でもくり返し誇らしげに口にする。
最悪最低、無知蒙昧、無知無学、無知無能。
この言葉はやめておきなさいとアドバイスできる常識人はまわりに一人もいないのだろうか。

せめて、組閣時に「国民のために働く内閣」と言ったのだから、それからは「公助」をがんばると言うようにすればまだしもだが。
もうはじめから支離滅裂なのだ。

管内閣が船出するなり、いきなり学術会議会員任命拒否問題を引き起こして馬脚を現すなど、突っ込みどころ満載だが、ここからは浅学ではあるが、「自助、共助、公助」について考える。

まず、このフレーズは何も管が突然言い出したものではなく、2010年の自民党の綱領(立党55年宣言)のなかで次のように位置づけられている。

2.我が党の政策の基本的考えは次による
(3) 自助自立する個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助公助する仕組を充実する
3.我が党は誇りと活力ある日本像を目指す
(1) 家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、自立し、共助する国民

それ以前には、2005年の立党50年宣言綱領や、1955年の立党時綱領のなかにも「自助」「共助」「公助」という単語は見当たらない。

私が最初にこのフレーズを聞いたのは、小泉政権の時代で、2002年前後だったと思う。
NHKの深夜の国政の何かを解説する番組だった。
NHKの解説委員か政府の官僚だったかが、国民の在り方か、社会福祉の理念だったかを解説している場面で、それがあたりまえの考え方であり、きちんと教えてあげましょうという感じで「まず自助、次に公助、最後に公助ですよ」と述べた。
そのときは、へえー、そうなんだ、といった単純な感想を持った。

「自助・共助・公助」というフレーズは、新自由主義が世界を席巻していく中で生まれてきたものだと思っている。

新自由主義とは何かを説明しようとすれば、私などはきっととんでもないまちがいをするだろう。
そこをあえて言うならば、つまるところ大企業(おもに多国籍大企業)および大資本家が世界中で自由に金儲けができるような資本主義のこと。

法人税を下げるために消費税を上げ、社会保障を削減する。
政府はできるだけ社会保障などに関わらないですむような「小さな政府」をめざす。
大企業ができるだけ自由に活動できるために、労働法制や貿易などにおけるさまざまな規制を撤廃しようとする。

「小さな政府」については、2005年の自民党綱領に次のような小見出しと解説が見られる。

小さな政府を
私たちは、国、地方を通じて行財政改革を政治の責任で徹底的に進め、簡省を旨とし、行政の肥大化を防ぎ、効率的な、透明性の高い、信頼される行政をめざします。また、国、地方の適切な責任分担のもとで、地方の特色を活かす地方分権を推進します。

「自助・共助・公助」「小さな政府」は新自由主義には欠かせないキーワードなのだ。

ここまで書いてきて、赤旗の次の記事を探し当てた。

赤旗 2020.6.28付

さすがに簡潔でわかりやすい。
これから私が言おうとしていることもちゃんと書かれている。
これ以上説明の必要なし、もう終わろうかとも思うが、もう少し書く。

「新自由主義に基づく諸政策を実行した主な政治家にはロナルド・レーガン、マーガレット・サッチャー、中曽根康弘、小泉純一郎などがいる」とWikipediaにある。


ロナルド・レーガン
レーガンは1981年に大統領に、サッチャーは1979年に首相に、中曽
根は1982年に首相に。
してみれば、政治家としてはこの3人がほぼ同時多発的に新自由主義を始めた元祖だ。
あえていえば、サッチャーから始まったともいえる。

レーガンと中曽根といえば「ロン・ヤス」。
気持ち悪い。

レーガンは次のようなレーガノミクスといわれる政策を遂行した。

「経済活動に関する規制の撤廃と緩和による自由競争の促進、通貨供給量に基づく金融の引き締めと緩和、戦略防衛構想(SDI)の推進などによる軍事支出の増大、大規模な減税による供給面からの経済刺激」Wikipediaから

マーガレット・サッチャー
鉄の女サッチャーは次のようなサッチャリズムだ。

「国営の水道、電気、ガス、通信、鉄道、航空などの事業民営化と経済に対する規制緩和により、社会保障支出の拡大による政府支出の拡大をしながら、他の分野では民営化と規制緩和を進めて、政府の機能を削減した」*Wikipediaから

中曽根康弘
中曽根といえば、「この顔がウソをつく顔に見えますか」といって大ウソをついたことを思い出すが、日本専売公社、日本国有鉄道および日本電信電話公社の三公社を民営化させた。
荒技と言っていい。
特に国鉄の民営化は大きな負の遺産を後世に残したのではないか。
「不沈空母」発言も記憶から消えないが、まあ日本戦後首相ワースト3の一人と思っている。
ちなみに残りの2人は小泉純一郎と安倍晋三だ。
おっと岸信介という巨悪がいたからワースト4だ。

サッチャー、レーガン、中曽根から始まり、新自由主義は世界中を席巻しはじめた。

イギリスを見よ。
かつては「揺り籠から墓場まで」といわれる世界に冠たる福祉国家だった。
ところが1997年まで無償だった大学の学費が今では年間150万円が相場。
日本の学費が世界一(授業料の標準額53万5800円)かと思っていたら比較にならないほど高い。
「揺り籠から墓場まで自己責任」の国になろうとするのか。

アメリカを見よ。
アメリカ発のリーマンショックは世界的経済危機を引き起こし、世界中を不幸のどん底に突き落とし、いまだに回復できないでいる。
トランプがコロナを武漢ウィルスと言って中国を激しく非難しているが、世界大恐慌(1929年 古い!)もリーマンショックもアメリカ発なのに、アメリカは責任を取ったことがあるのか。
ちょっと脱線気味。

日本はどうか。
なんといっても小泉政権時代に新自由主義はピークを迎えた。
そのスローガンは「聖域なき構造改革」。
郵政民営化を筆頭に、道路公団民営化、指定管理者制度、労働者派遣法の規制緩和(非正規社員の増加)、不良債権処理(大銀行は助ける)、医療制度改革(自己負担が3割になる!)などなど、「官から民へ」「中央から地方へ」とまさに「小さな政府」「自助」を叫びながらの改革は日本社会に大きな傷跡を残した。
「自助」の言い換えである「自己責任」という恐ろしい言葉が流布したのもこの時期だ。

このような比類なき冷酷さを含んだ小泉政権は国民から熱狂的な支持を受けた(なんてこった)。
そして、実質小泉を操った極悪人竹中平蔵は今でも表舞台で活躍し、管政権でも最大のブレーンとなっている(この国はいったいどうなってんだ?)

新自由主義を引き継いだ安倍は、スローガン政治で、「日本をとりもどす」「アベノミクス」「女性が活躍する社会」「地球儀を俯瞰する外交」「働き方改革」「全世代型社会保障」「憲法改正」「1億総活躍社会」「待機児童ゼロ」「非正規という言葉をなくす」「介護離職ゼロをめざす」などなど覚えきれないほどのスローガンを次から次へと掲げて長期政権となった、スローガンのほとんどはむなしい結果しか生んでいない。

「地球儀を俯瞰する外交」だけは実際に「訪問回数81、訪問国・地域80、のべ訪問国・地域176、飛行距離1,581,251㎞ 地球約39.53周 2020年1月17日現在」と官邸HPにでかでかと載っていて、派手だ。
しかし、政府専用飛行機でいつも経済人を何十人とぞろぞろと引き連れた行ったこの豪華海外旅行に税金がいくら使われたのかは載っていない。
この外交にしても、結局は多くは日本大企業のためのものであり、新自由主義の一環だが、それさえほとんど成功していないのではないか(原発輸出の挫折など。もちろん挫折して良かった)。
本来の「北方領土返還」、拉致問題の解決などの外交は1ミリも進んでいないというよりマイナスの結果さえ生んでいる。

ただ一つといえば語弊があるが、安倍が成果を出したスローガンは「世界で一番企業が活躍しやすい国」だ(政権初期からの一貫したスローガン)。
この政策の総括というかまとめは「世界一企業が活躍しやすい国のリアル」と題した連載がWEBの「論座」に一括掲載されていて、興味ある方は参照して欲しいが、私はちょっと全部読む気になれない。

私が言いたいことは、安倍政権は大企業のために奉仕する政権だということを最初に宣言し、実際にそのための数々の具体的政策を実行し、多くは成功したのではないか。
ところが、「世界で一番企業が活躍しやすい国」とは、新自由主義そのものである。
企業が活躍しやすいというのは、労働者や国民を守るためのさまざまな規制を撤廃するということだ。
当然犠牲になったのは労働者、一般庶民であり、事実、企業の内部留保は空前の額に達し、株価も相当の高値を保つ一方、非正規労働者は増え、労働者の賃金は上がらず、社会保障は削られっぱなし。

赤旗 2020.6.5付

赤旗 2020.10.2付

要するに、新自由主義の大きな弊害の一つは経済格差の拡大だ。
世界レベルで見ると次のような実態がある。
赤旗 2019.1.22付
すさまじい格差としかいいようがない。
アマゾンのベゾスは12兆3200億円の財産!?

そもそも1兆円という単位は想像もできない大きさだ。
100万の100万倍が1兆だから、毎日100万円使えば、100万日使うことができる。
100万日は1年365日で割ると、2740年になる。
毎日100万円ずつ使っても2740年使い続けないと使い切れない。
2740年前といえば日本は縄文時代の終わり頃。
1兆円でもそうなのに、それが12兆3200億円!!

2017年1月16日には、上記記事と同じオックスファムが「世界の超富豪8人の持つ富が、世界人口の半分、より貧しい36億人が持つ富と等しくなっている」と報告している。

いっぽう日本には年収200万以下が1200万人。
世界の貧困状況はILOが次のような報告書を発表した。

赤旗 2020.1.22付 本文のみ

経済格差の拡大、正社員から非正規労働への置き換え、小さな政府をめざしての社会保障の削減、このような新自由主義の弊害は今年に入っての新型コロナパンデミックにより、よりいっそう可視化され、多くの人の気づくところとなった。

橋下徹のツイッターに驚いた。
4月7日に緊急事態宣言が7都府県に出されているので、このツイッター(4月2日)はちょうど流行第1波のピークの頃だ。

保健所や病院がたいへんな状況に追い込まれているのを見て、二重行政のムダとかいって、病院を統廃合し、保健所のリストラをしてきたツケが回ってきた状況を橋下らしからぬ謙虚さでツイートしている。*保健所のリストラについてはこちらを参照。
もっとも「何を今さら」と炎上しているらしいが、私はこの点に関しては安倍や管よりよほどましだと思っている。

さらに驚きが続く。
赤旗 2020.5.24付 続きの2面は略

「サッチャー哲学の継承者」「新自由主義の申し子」のジョンソン大統領が、新自由主義の欠陥を身をもって体験し、世界に「社会が存在する」、つまり新自由主義路線はまちがっていたと発信したのだ。

結論を先に行ってしまうと、管はこのニュースさえ知らないのだろうか。
先に進もう。

現在、世界でコロナの最大の感染国はアメリカということになっている。

赤旗 2020.11.15付
このジョンズ・ホプキンス大学の調査結果を見るたび思うのは、死者の実数による順位だけでなく、人口、例えば10万人あたりの数で比較して欲しいということ。
例えば上表11月14日現在の死者数上位7位までを、人口10万人あたりで計算してみると、
  アメリカ 74.4人
  ブラジル 78.6人
  インド   9.5人
  メキシコ 77.4人
  イギリス 77.2人
  イタリア 73.2人
  フランス 63.6人
となり、ずいぶんようそうが変わってくる。
この7カ国中ではアメリカは4位になる。

それと、感染者数も累計だけでなく、回復者を除いた現時点での感染者数を表記してくれればと思う(表から引き算すればわかるのだが)。
不可思議なこともあって、いつまでたってもイギリスの回復者数が異常に少ないのだ。
4月8日の集計結果から赤旗では開日この表が載っていたが、今は週に1度になっている。
その4月8日では英国の回復者は325人で、この時点から他国に比べて1桁から2桁少ない。
上記11月14日現在では3桁少ない。
大きな疑問だが、赤旗にはいっさいその説明はない。
もちろんジョンズ・ホプキンス大学に説明を求めるのが筋ではあるが。

と、また話がそれてしまった。

まあ実数にしても人口あたりにしてもアメリカは感染者、死者数が多いことは確か。
その理由は私には分析できないが、次の2つだけは私にも想像できる。
1つはトランプ大統領の無能を通り越した無為無策のなせるわざ。
2つ目は先進国で唯一かどうか自信はないが、皆保険制度かそれに近い医療制度がないこと。
アメリカは新自由主義の権化のような国だ。
新自由主義は自助、自己責任の世界だから、経済的弱者は病気になっても医者にかかれない、かかれても満足な医療は期待できない。
アメリカとはそういう自由な国なのだ。

とだらだら書いてきてしまったが、そろそろ結論だ。

要するに、世界はここ40年続いた新自由主義路線に疑問を持ったのだ。
これでいいのか、まちがった政策ではなかったのかと。

「コロナと新自由主義」でグーグル検索してみると、ここまで述べてきたこととどうような記事がわんさかと出てくる。
それほどこの見解は衆目の一致するところなのだろう。
赤旗 2020.10.29付
世界のまともな指導者たちは、これからの社会は新自由主義のままでいいのか、別の道はないのかと模索している。

ところがである。
この状況下で管は総裁選の第一声で「自助・共助・公助」と誇らしげに政策理念を述べた。
ふつうの感覚を持った人であれば、こいつバカじゃないかと思って当然ではないか。

総裁選の最初に自身のブログに載せ、あとは候補者どうしの討論会で何度も、総裁に決まってもさらには国会で総理大臣に指名されても、所信表明演説でも、くり返し「自助・共助・公助」と言い続ける。
どこまでバカなんだろう、知性のかけらもないのか、やめさせない周りもバカばかりなのか。

コロナ禍で職を失った人たち(特に非正規労働者は真っ先に失業)、店を閉めなければならなくたった店主たち、学業をあきらめなければならなくなった学生たち、多くの国民が悩み苦しみ、自殺まで追い込まれている人たち。
そういう人たちに向かって、総理大臣が「まず自助、自分でなんとかしなさい」と言うか?
バカではすまされない、総理大臣なのだ。
冷酷非情、どこまで国民を苦しめたら気がすむのか。

おまけに、「自助・共助・公助」と言った後に「そして絆」と付け加える。
何だこのフレーズは。
ふざけているのか、気色悪いとしかいいようがない。

まあ先に紹介した自民党綱領の「3.我が党は誇りと活力ある日本像を目指す(1)家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、自立し、共助する国民」のつづきには

(2) 美しい自然、温かい人間関係、「和と」の暮し

とあって、綱領に忠実に「絆」という言葉を付け加えたとも考えられる。
何の考えもなしに。

まだ書き足りないことがたくさんあるような気がするが、ひとまずここまでにしておこう。
最後まで読んでくれた人に感謝。

しつこいが追伸

小泉の頃は「共助」といえば健康保険組合とか農協などの各種協同組合・互助組合などのことを言っていたのだが、管は家族、親族、友人、地域などの意味で使っている。
より新自由主義的だ。


 五島列島シリーズ㊲  ◆ マツヨイグサ(アカバナ科マツヨイグサ属)◆

マツヨイグサ 2018.5.12撮影 宇久島 大浜海水浴場
黄色の花はしおれると赤くなる。最近見ることが少なくなったような気がする。昔はやった宵待草という歌があるが、それがこのマツヨイグサのことなのか、ツキミソウのことなのかわからないという。どちらにしてもヨイマチグサ(宵待草)という名は花としては一般的な名前ではない。マツヨイグサとして覚えてね。

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