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2019年1月23日水曜日

安倍成長戦略の目玉「原発輸出」の破綻

赤旗 2019.1.18付
「原発輸出」の推進は安倍内閣の成長戦略の目玉だ。
2013年6月14日の閣議で決定している。

福島第1原発事故が起こったのは2011年3月11日、民主党政権の時代で首相は菅直人だった。
世界中を震撼させ、東日本が壊滅してもおかしくないような福島原発事故が起こった直後数年間の民主党政権・自公政権の原発輸出をめぐる動きは次のようなものだった。
赤旗 2013.6.16付
民主党の野田内閣も自公の安倍内閣も首相自身が原発輸出に奔走している。
このトップセールスでの安倍の言いぐさがものすごい。
2013年5月の中東訪問中での記者会見で次のように言い放った。

また、原子力発電については、中東諸国から、日本の最高水準の技術、そして過酷な事故を経験した中での安全性への強い期待が寄せられました。こうした期待に日本は応えていくべきだと思います。

普通の感覚ではとても言えないことだ。
この会見を聞いた世界中の普通の人々(つまり世界中のほとんどの人)はのけぞってしまったにちがいない。

以後、安倍は何度も日本の原発は「世界で最も厳しい安全基準」をもっているとして、原発輸出に邁進してきた。

「世界で最も厳しい安全基準」なるものがいかに噴飯物かはここでは触れないが、そのようにして一時は次のように原発輸出の動きは具体化していた。

赤旗 2013.5.30付
本当に想像を絶する。

福島事故から2年しかたっていない。

この頃の福島のようすを、いま赤旗日刊紙で連載している小説「大地の歌ごえ」(たなかもとじ著)“第三章 真実の証明”(2019.1.22付)から引用してみる。
場面は「福島原発事故いわき訴訟」での原告団長の弁論だ。

引用ここから――

次に、事故発生による原告1574人の精神的経済的苦痛について述べます。
これまでの公判で24人の原告が意見陳述をしています。
生業を失った方、営業不振による倒産、転職、移転、小児甲状腺がんの恐怖、故郷喪失による絶望、長期の休漁で地元の魚が食べられず、山菜を収穫しても売れない風評被害、海水浴もできない、加えて、関連死や孤独死をした関係者の痛苦など、深刻なものばかりです。

いわき市の除染の状況について申し上げます。

平地区などではようやく自宅の除染が実施されるようになりましたが、4年以上放置されている個所が多々あります。
また、除染をしても、例えば、72の小学校、40の中学校、44の保育所、22の幼稚園では、いまだに汚染土壌が校庭などに埋められていて運び出せないままです。
仮置き場や現場保管が続いています。
側溝汚泥は取り除いても市が回収できないことから、この4年以上、多くのところで放置されたままになっています。

引用ここまで(改行、漢数字などは編集した)――

避難者はまだ15万を超えていたし、故郷は帰還困難区域・居住困難区域、放射能汚染水はダダ洩れ、何十万もの人々が悲しみに打ちひしがれ、関連死が続出、子どもたちの甲状腺被ばくによるがんやその疑いも現実のものとなっていくような状況のなかでのことだ。

もう一度言うが、普通の感覚では考えられないようなことを堂々と胸を張ってやっておられる。
その安部路線の行く先が冒頭の赤旗記事にあるように「安部輸出戦略は全滅」したのだ。
喜ばしいというか、ざまあみろというか、ひとまずホッとしたことではある。
とはいえ、彼らが普通の感覚をとり戻したというわけではもちろんない。
そのことは最後に述べる。

ところで、冒頭述べたように福島原発事故が起こったときの首相は菅直人だった。
菅直人は事故の前年、日越首脳会談において、ベトナムでの原発受注をほぼ成功させ、得意満面だったことを覚えているだろうか。

日経WEBから抜粋
この頃NHKがNHKスペシャルで加熱する世界の原発輸出戦略の番組を放送した。

番組の中で日本はベトナムへの原発輸出を決め、菅直人の喜ぶにあふれた姿を紹介している。

私はこの番組を見ながらとても不思議な思いがした。
番組の中では原発の危険性を訴える場面は1秒たりともない。
果たしてこのような動きはいいのだろうかという問題意識のかけらもない。
先進諸国がしのぎを削って発展途上国に原発を売り込み、それがその国の経済発展につながるという経済の動きをダイナミックに伝えるものに終始していた。

60を過ぎた私たちの世代は、原発が日本に持ち込まれようとしたときの時代の空気をリアルタイム(学生の頃)で感じ取っている。
象徴的な言葉は「トイレなきマンション」だ。
この言葉をよもや忘れるようなことはないはず。
つまり、原発が日本列島に50以上建設され、国内の消費電力の30%以上を賄うようになった21世紀になっても、日常の生活の中で原発のことを考えないようになっても、「トイレなきマンション」という原発の悪魔的側面を私たちの世代が忘れてしまうというようなことがあるのだろうか。

原発はたとえ事故が起こらなくても放射性廃棄物、つまり核のゴミは増え続け、そしてその処理の方法はいまだに確立していないのだ。
原発はたとえ事故が起こらなくても、稼働しているかぎりその危険性は増大していくことはわかりきっている。

こんな簡単な理屈を菅直人も世界の指導者もNHKの優秀なスタッフもみんな忘れてしまったのだろうか。
忘れたふりをしているのだろうか。

とにかくこのNHKスペシャルを見て大きな「?」を抱いた翌年に福島事故は起こった。
あの得意満面だった菅直人が悲壮な顔で事故処理に当たる姿を見ることになる。

その菅直人もいまでは原発反対を叫び、四国の巡礼までしたということだが、滑稽としか言いようがない。

実は菅直人より以前に小泉純一郎が首相として原発輸出に積極的に関わっていて(2005年の「原子力政策大綱」)、そしていまでは細川護煕とならんで脱原発のシンボルのような扱いを受けていることも滑稽だ。

滑稽だが、彼らは福島事故から学んだのであり、安倍晋三に比べれば1万倍はましだ。

なぜ「安倍輸出戦略」は全滅したのか。
安倍政権が原発輸出の罪深さに気づいたからか。
とんでもない。
ただ単に、コストが異常に増え(福島事故のおかげで?)、もうけが望めなくなったからに過ぎない。
安倍政権の原発輸出推進の考えは変わっていない。

赤旗 2019.1.20付
いま金もうけさえできれば後は野となれ山となれ、人類が絶滅したって知ったことかという連中が日本を牛耳っている。
そしてその安倍政権の支持率が40%を切ることは滅多にない。


 佐渡ドンデン山シリーズ⑩  ◆ ホツツジ(ツツジ科ホツツジ属)◆

ホツツジ 2017.9.30撮影
花びらが反転し、花柱が長く伸びるのが特徴。もう少し高いところではミヤマホツツジという種になって、ちょっと区別が難しい。花に淡い紅色があればホツツジ。

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