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2018年12月2日日曜日

入管法改定と「奴隷労働」

NHK・BS1で頻繁に放送される「BS世界のドキュメンタリー」。
ついつい録画して見てしまう。
最近は「Why Slavery?」がテーマで6本の番組をすべて見てしまった。

最終日の「とらわれの日々からの脱出」(ハンガリー)のみ特殊な事件のようだったが、他はすべて社会問題であり、民族的、宗教的、歴史的背景を持った重たく深いテーマだった。

このシリーズは国際共同制作であり、10カ国前後の国の放送局が参加し、日本からはもちろんNHKがすべての番組に関わっている。
だから私は思った。
なぜ日本の「奴隷労働」がテーマの一つにならなかったのだろうかと。

今の国会を騒がしている最大の案件は「入管法改定案」だろう。
例によって、安倍政権の強権的手法により11月27日に衆議院を通過した。
赤旗では連日多くの紙面を割いてこの問題を取り上げているが、一般紙ではどうなのだろう。
この法案は日本の労働者不足を外国人労働者の拡大によって解決しようということなのだが、最大の問題点は現在の「奴隷労働」をさらに拡大していいのかということだ。
その視点の報道があまりに弱い気がする。

赤旗 2018.10.11付
NHK日曜討論 2018.11.4
外国人労働者は年々増加しているが、ここでは主に技能実習生の労働実態について書く。

厚労省のホームページには外国人技能実習制度について次のように書いてある。

「外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております」

つまり、国際貢献なのだ。
しかしその実態は奴隷労働

赤旗 2015.8.26付 「西日本のページ」から
赤枠は筆者がつけた
この制度は最初は1993年に制度化されたものだが、以後、何度も手直しが行われ、直近では昨年の11月に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」として施行されている。

しかし、何度もその奴隷労働(人権侵害)が指摘され、法の改定が行われてきたにもかかわらず実態は改善される気配はない。
その奴隷労働の実態とは具体的には次のようなものだ。

●長時間労働・残業代未払い
●最低賃金以下の低賃金(時給300円?!)
●逃亡防止のためにパスポートや銀行通帳の取り上げ
●未加入なのに社会保険料天引きといった不当な給与カット
●タイムカードや賃金台帳の偽装
●監視カメラでトイレに行く回数を制限 
●雇用者からの暴力・虐待
 ……

2000年代に入ってからそのような問題はすでに社会問題になっていた。

2013年に広島の牡蠣加工工場で起きた中国人技能実習生による殺人事件も、私などすぐに奴隷労働の結果によるものと思ってしまった。
週刊金曜日 2016.3.11号 雨宮処凜のコラム
赤旗 2018.11.10付
その工場の経営者遺族はいかに人道的に実習生を扱ってきたかを述べるのだが、にわかには信じられない。

同じ時期にNHKで実習生を家族のように扱い、とてもうまくいっている工場を紹介する番組があった。
しかし、そこに出てくる実習生は経営者を「社長様はとてもいい方です」という。
「社長様」と呼ぶ(呼ばせる)こと自体奴隷労働を自ら暴露していることに気づかないことが情けない。

実習生は母国からブローカーを通して日本にやってくる。
悪質なブローカーはその国での年収の10年分ぐらいの手数料を取る。
つまり、実習生は借金まみれで日本にやってくるのだ。
時給300円では永遠に借金は返せない。
月収10万以下では借金は返せないと言われている。
最大5年の在留で、借金も返せず帰国しなければならないのなら、なんのために日本へやってきたのかということになる。

赤旗 2018.6.22付
この地獄から抜け出すために、実習生はやむなく失踪し、生き抜くための方策を考える。

NHK日曜討論 2018.11.4
今回の入管法改定にあたって、政府は実習生からの聞き取り調査結果の一部を公表した。
そこで、実習生失踪の理由を法務省は「より高い賃金を求めて」が87%で最多だと説明した。
失踪は実習生のわがまま、金儲けのためと言わんばかりだ。

ところがこの調査結果がまたまた安倍政権お得意の捏造だった。
そもそも聴取票(実習生へのアンケート)の失踪の動機についての回答項目自体に「より高い賃金を求めて」という項目はなく、「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」の3つであり、それを合わせたものが87%だったということだった。
しかも、その87%という数字もまちがっていて、67%と訂正された。

赤旗 2018.11.19付
その他いくつものまちがいが報告され、約2900人分の「聴取票」を公表せよと野党は要求するが、政府は拒否。
よほど見られたら困ることがあるのだろう。

しかし、この聴取は2009年の国会・法務委員会での付帯決議によって行われたものであり、国会に提出されて当然なものなのだ。

法務省は新たに次のような聴取票の集計結果を公表した。

●失踪前の月額給与が「10万円以下」が56.7%と過半数。「10万円超~15万円以下」(36.1%)と合わせると9割超。
●実習生が母国の送り出し機関に支払った金額は「100万円以上~150万円未満」が38.3%で最も多く、88.9%が親族や銀行からの「借り入れ」で資金を調達。

そして政府もしぶしぶ閲覧のみ認めた(複写・撮影は認めず)。

赤旗 2018.11.20付
技能実習制度は実習生が母国へ帰って日本で培った技能を母国の発展のために生かしてこその制度だ。
野党が政府を追及するのは、この実習生を引き続き日本での労働力不足の担い手として奴隷労働をさせようとしているからだ。
国際貢献と奴隷労働、なんという建て前と本音の使い分けだろう。

政府は今回の新しい制度は技能実習制度とはちがうものだとごまかす。
しかし、山下法相は「半年遅れれば、万単位の方々が帰ってしまう」と委員会で発言した。
赤旗 2018.11.24付
赤旗 2018.11.27付
本音をあけすけに述べたかたちだ。
実際、政府の見通しとしては右のような実習生の横滑りを想定している。

このような政府の国民であることが恥ずかしい。

「奴隷労働」とは「人権侵害」という表現より強いものだ。
一般のマスコミではあまり使われていないのではないだろうか。
ましてNHKではね。

しかし、日本の技能実習制度は「現代の奴隷制度」として国際的にも批判されている。
朝日デジタル「WEBRONZA」2018.7.16から抜粋 赤線は筆者 
最後に、共産党の志位委員長の会見を載せておく。

赤旗 2018.11.29付 赤枠は筆者

赤旗 2018.11.14付

 佐渡ドンデン山シリーズ⑧  ◆ ミヤマアキノキリンソウ(キク科アキノキリンソウ属)◆

2017.9.30 ミヤマアキノキリンソウ
ドンデン池の畔に咲いていた秋を代表する花。里山の低山にはアキノキリンソウが咲いて、高山ではミヤマアキノキリンソウになる。しかし、ほぼ同じ場所に下のような普通のアキノキリンソウも見られた。

2018.9.30 アキノキリンソウ
ミヤマアキノキリンソウは先端部に集中して花が付くがアキノキリンソウは茎全体にまばらに付く。

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