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2017年3月11日土曜日

小さき人々の幾千万の「原発さえなかったら」の声が聞こえるか

柳美里
作家の柳美里が月に一度赤旗に「南相馬 柳美里が出会う」というエッセイを書いている。

柳美里といえば、過去に自著「石に泳ぐ魚」のモデルとされた人物からプライバシー侵害で訴えられる事件があったりして、あまりいい印象を持っていない。
作品も芥川賞受賞作「家族シネマ」しか読んだことがなく、それも内容はほとんど覚えていない。

一度抱いた悪印象はなかなか拭えないのだが、それでも東日本大震災、福島原発事故に対して真摯に向き合い、南相馬に転居してまで活動を続ける姿をみていると、ちょっと見直したりもする。

その柳美里の直近のエッセイの一部だ。
赤旗 2017.2.27付 柳美里のエッセイから
津波によって流され、海上で、沿岸で、さまざまな場所で救助を待っていた人々がいただろう。
必死の救助活動により多くの命が救われたと思う。
しかし、福島第1原発から10キロ圏内に取り残された人は救われることがなかった。
死んでいった人、救うことができなかった人の無念さは柳美里のエッセイにあるとおりだ。
当事者は「原発さえなかったら」と胸が張り裂けんばかりの思いだっただろう。

2013年6月17日、自民党の高市早苗政調会長が、「原発事故によって死者が出ている状況ではない」と講演で述べた。
東京新聞2016.3.6
事故から2年以上がたっている。
この間、原発事故関連死が何人いただろう。

右図は事故から5年後(1年前)の数字だが、東京新聞は「原発関連死1368人に 本紙集計 1年で136人増」という見出しをつけている。
記事は冒頭次のように書かれている。

東京電力福島第一原発事故で避難した後、病状や体調が悪化して死亡した人を、本紙が独自に「原発関連死」として福島県内の市町村に取材したところ、二〇一一年三月十一日の発生後から、総数は少なくとも千三百六十八人になったことが分かった。昨年三月の調査から一年間で百三十六人増えた。事故から五年近い今も約九万九千人の県民が県内外で避難生活を送り被害は拡大を続けている。
――転載ここまで 

入院患者が避難搬送中に死亡。
十分な治療が受けられず病気の悪化により死亡。
元気に畑仕事などしていた高齢者が仮設住宅に引きこもり孤独死。
夢に向かってがんばっていた若者が将来に絶望して自殺。
そしてその方々の遺族や友人たち。
職を失った人。
ばらばらになった家族。
ふるさとにもどれない人たち。
いじめにあう子どもたち。
甲状腺がん、低線量被曝の影響、晩発生障害におびえる人々。

どれほど多くの人が「原発さえなかったら」とつぶやき、叫び、苦しんだろう。
今も8万人といわれる原発事故避難者をはじめ、どれだけの人が「原発さえなかったら」と日々呻吟しているだろう。

それでも電力業界、安倍政権は原発再稼働をめざし、原発を海外に売り込む。
そうまでしても原発利権を失いたくないか。
それでも原発立地自治体は再稼働を支持する。
そうまでしても交付金を得たいか。

高市発言も原発再稼働の必要性を訴える文脈のなかでのものだ。
2013年9月から約2年、日本の原発は一基も稼働していなかった。
原発なしで冬も夏も、そしてまた冬も電力は不足しなかった。
どこに再稼働の必要があるのか。

小さき人々(スベトラーナ・アレクシェービッチ)の何万回、何百万回、何千万回と胸に去来する「原発さえなかったら」の日々の叫びが聞こえないか。

赤旗本日付(2017.3.11)に共産党志位和夫委員長の談話「東日本大震災から6年を迎えるにあたって」が掲載された。
その後段、原発関連の部分を掲載する。
赤旗2017.3.11付 志位委員長の談話から
*東日本大震災による全体の関連死は1都9県で3523人(2016年9月30日現在)。避難者数は全国で約12万3000人(2017年2月13日現在)。
――復興庁HPから

*タイトルの「幾千万」は、たとえば原発避難者8万人が1日に1回「原発さえなかったら」とつぶやけば、1年間で2920万の声になる。

◆ オナガガモ(カモ目カモ科マガモ属)◆
オナガガモの幼鳥 2014.2.11撮影
オナガガモは、マガモと同じくごく一般的に目にする。名前の通り尾が長いのだが、上の写真は幼鳥でそんなに長くはない。しかも、成鳥なら雌雄の区別はすぐつくのだが、幼鳥は区別がつきにくい。くちばしが全部黒なのがメスらしいので、この写真はメスの幼鳥だと思われる。
オナガガモの成鳥 右がオス 2014.2.11撮影
こちらはオナガガモの成鳥。尾が長いことがわかる。右側がオスで左の地味なメスに比べて襟首の白などがはっきりしていて美しい。

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