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2013年2月6日水曜日

日本の森林と南方熊楠


NHK教育で続いていた「日本人は何を考えてきたのか」シリーズが終わった。
録画しているものをときどき観ている。
先日は「第3回 森と水に生きる 田中正造と南方熊楠」を観た。

田中正造と南方熊楠については、それなりの知識があったので、復習って感じで観ていた。
後半の南方熊楠の編で、彼が人生後半に取り組んだ神社合祀反対運動を紹介している場面の次の画面に釘づけになった。

NHK教育テレビから 和歌山県日高川町大山

画面中央から左にかけてこんもりとした森がある。
これが鎮守の森だ。

南方熊楠は明治政府が進めようとした神社合祀に抵抗した。
この合祀によって日本各地の多くの鎮守の森が失われたわけだが、南方はその森を守ろうとしたのだ。
いわば自然保護運動の先駆けだ。

時代劇作家の津本陽が「巨人伝」という南方熊楠の伝記小説(文春文庫で上下2巻)を書いている。
10年ぐらい前に読んだのだが、この鎮守の森を守るというところで若干の違和感を持っていた。

山のふもとにある鎮守の森なんて、山全体の森に比べれば小さなものではないかという感覚だ。
なぜわざわざ鎮守の森なのかについての説明は、「巨人伝」に書かれていなかったと思う。
NHKのこの番組においても説明はないし、出演した解説者もその点については触れていない。
というよりも、私のような疑問を持つ人がめったにいないのだろう。

実は、年の初めに読んだ赤旗日曜版のマンガが今回の投稿のきっかけだ。

赤旗日曜版の2面にわたる連載マンガはけっこうおもしろいのだ。
昨年は山本おさむが「今日もいい天気 part Ⅱ」で福島原発の被害を独自の目で告発していた。
今年から新しい連載スタートということで、その予告編めいたものが12/30・1/6合併号に載ったのだ。

赤旗日曜版12/30・1/6合併号
この最初の一コマから知的好奇心がムクムクとわいてきてしまう。

この山には木がないというのだ。
そういうふうに浮世絵の風景画を見たことがない。


江戸時代の自然は、それはまったく今では想像しようもないほどすばらしいものだったにちがいないと思い込んでいたフシがある。
その先入観をこのマンガ家青木萌はいきなり打ち砕こうとする。
ほんとだろうか。


20年ぐらい前、世界遺産になる前だが屋久島を訪れたとき、江戸時代にたくさんのスギが伐採されたと聞いて、その切り株などもたくさんみた。
そのとき思ったことは、なぜこんな日本の最果てのようなところまで木を切らないといけないかと不思議に思った。
このマンガを見て、ちょっと納得したのだ。
しかし、ほんとだろうかという疑惑も残る。

10日ぐらい前に「警察日記」という森重久弥が主演した映画(NHK・BSプレミアム)を録画で観たのだが、その中で何度も何度も背景に会津磐梯山がうつる。
1955年の作品だから、昭和30年だ。
このときもその山肌に釘付けになった。

禿げ山とはいえないが、木のない藪草に覆われただけのようにも見える。
古い白黒の映画で、どうもはっきりしないのだ。
昭和30年だからいくら何でも私の思い過ごしだろう。

そして「日本人は何を考えてきたのか」の映像だ。
左の方の鎮守の森以外は木が生えていないのではないだろうか。
右の稜線を見ると生えているようにも見えるが、頂上にある1本の木と比べると、それはせいぜい低い灌木か草藪と思われる。

マンガ家青木萌が言っていることを裏づけているなと思った。
南方熊楠の時代、森といえば鎮守の森ぐらいしか残っていなかったのではないだろうか。
その最後の自然の砦である鎮守の森を神社合祀令で壊されようとした。
だから熊楠は反対運動に立ち上がった。

以上私の推測だが、このように考えれば納得がいくのだ。

このマンガには参考文献として次の2冊の本が紹介されている。

 水本邦彦著・日本史リブレット「草山の語る近世」(山川出版社)
 太田猛彦著「森林飽和―国土の変貌を考える」(NHKブックス)

「草山の語る近世」は図書館になかったが、「森林飽和」の方はあったので昨日借りてきた。
本を読んでから、また日曜版のマンガの展開状況によって、またこの続きを書くとしよう。

◆ 南イタリアシリーズ⑩ イトスギ(ヒノキ科イトスギ属) ◆
2012.12.29撮影 タオルミーナ
ピンクの花は前回紹介したブーゲンビリアだが、今回はそのブーゲンビリアに覆われているものに注目してほしい。写真からはわかりにくいのだが、イトスギだ。左右に2本ある。イトスギは糸のように細い杉だが、ヨーロッパを象徴するような木で、ゴッホなどもこの木をたくさん描いている。イトスギにまとわりついて高く伸びていくブーゲンビリア。そして崖一面に生えているサボテン。シチリアの風土をよく表していると思うのだが。

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