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2015年2月15日日曜日

「イスラム国」を「イスラム国」と呼ぶな! 書くな!

今回の「イスラム国」による日本人人質事件により、残虐非道な過激テロ武装集団「イスラム国」という名がメディアによって日本中にまき散らされた。
事件そのものへの論評はここではしない。
「イスラム国」という名称について異議を表明する。

NHKスペシャル「追跡『イスラム国』」から
2012年、「アラブの春」がシリアまで伝播して、市民の変革を求める動きがアサド政権を包囲した。
アサド大統領は容赦のない残虐な弾圧を市民に加え、無辜の犠牲者が増大していった。
2013年、内戦状態になったシリアに突如異質なものが入り込んできた。
ISISと名乗る集団だ。

初めてこの名を聞いたとき、メディアは「アイエスアイエス」と呼んでいたと思うが、今では「アイシス」と呼んでいる。
当初この略称の正式名がよくわからなかった。

NHKスペシャル「追跡『イスラム国』」から
2014年6月29日、バグダディが「イスラム国」の樹立を宣言して以来、日本のメディアはこぞってISISを「イスラム国」と呼び始めた。
当事者が自分をどう名乗ろうと勝手だが、メディアが当事者の発表のままに「イスラム国」と表記し、呼び続けることに大きな違和感を感じた。

キリスト教の過激原理主義一派がテロを起こして「キリスト国」と名乗ったら、同じようにメディアはそのテロ組織を「キリスト国」と呼ぶのだろうか。

今回の日本人人質事件報道によって、「イスラム国」の表記、言葉は日本中に氾濫し、それはイスラムに対する偏見を多くの日本人の中に植えつけてきたと思う。
メディアは、悪意はなかったにしても、そのことに配慮する意識はないのだろうか。

そんなとき、仲間内の集まりのなかで、「イスラム国」について学習したいからおまえまとめてチューターをしてくれないかと言われた。
それで、2/1に放映されたNHKスペシャル「追跡『イスラム国』」や1/6放映のNHK・BS海外ドキュメンタリー「『イスラム国』はなぜ台頭しのたか」(アメリカ制作)、Wikipedia、赤旗記事などを中心にいろいろ調べてみた。

調べてみると、カリフ、サラフィー主義、シャーム、サイクス・ピコ体制等々知らないことがたくさんあった。
テロ組織の名称についてもはっきりしたことがわかり、学習レジメの中の一節に次のようにまとめた。
筆者作成の学習レジメの一部
ISILという呼び名はうかつにも知らなかった。
しかも、国連、アメリカ政府、日本政府などはISIL(アイシル)という名称を公式に用いているとのことだ。
たしかに今の国会論戦を見ていると、安倍は「イスラム国」とは言わずにISILと言っている。

ISILのLはレバント(Levant)のLで、レバントとはシャームと同義語のようだが、その地理的範囲は漠然としかわからない。
そんなとき、2/7付の赤旗に「5万5000年前に2種類の人類が出会った?」という問答形式の科学記事が載り、そこにレバントの地図があったのだ!

ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の混血の記事はとても興味深いものだが、ここでは図だけ拝借することにした。

「『イスラム国』とは」と銘打った8名ぐらい参加の学習会らしきものは2/9に行ったのだが、そこで、この名称問題を語るときに熱くなってしまった。
ISIS(ISIL)が昨年の6月29日にみずから後半のISを除いて「Islamic State」とのみ自称し始めたのだから、メディアもそのまま前半の「IS」という略称を使えばいいではないか!
それまでISISという名称を使っていたのだから、これからはISにするということが一番自然であることは明白だ。
それなのにこのときからわざわざ「イスラム国」と和訳で呼び始めたのには何か意図があったのだろうか。

「イスラム国」とカギ括弧をつけて表記するところにメディアの最低限の良心を感じはするが、しゃべるときには「括弧付きのイスラム国」などとは言わない。
表記においてもカギ括弧が付いていない場合も散見される。

赤旗は見出しと本文の初出の場合は必ずカギ括弧が付いている。
しかし、本文再出の場合はカギ括弧なしの表記が多い。
最新の赤旗日曜版(2/15号)では、3つの記事の中に見だし、本文、写真説明で17回「イスラム国」が出てくるが、すべてカギ括弧が付いている。

こうして毎日のテレビニュースでキャスターが「イスラム国」としゃべっているのを苦々しく思っていたところ、昨夜(2/14)のNHK7時のニュースで、女性キャスターが立て続けに「IS」と言っている。
思わず引き込まれたのだが、続けてつぎのように説明が入った。

NHK NEWS WEB から
学習会のことがあったせいもあり、特にここ2週間ばかりこの問題を意識し続けていたので、このNHKの路線変更(?)には驚いてしまった。
もちろん歓迎すべきことであり、日頃NHKのニュースには文句ばかり言っているのだが、今回ばかりはさすがNHKと思ってしまった。

それでは他のメディアはどうするのだろうかと気になってくる。
今日の赤旗を見ると何の変化もない。
今朝のTBS「サンデーモーニング」でもいつも通り「イスラム国」で通している。
ただ、コメンテーターのハリス鈴木絵美だけは「IS」と言っていた。

ゴフーというサイトに「主要紙・通信社の表記方法」というものを見つけたので転載する。

Web「ゴフー」から
今のところ、NHKだけがあやまちを認めてただした。
この名誉ある措置を赤旗が最初にしなかったことをちょっと残念に思う。

赤旗2015.2.18付

 追記(2015.2.18) 

今日付(2/18)の赤旗日刊紙一面に右のような「お知らせ」が載った。
NHKより5日遅れで赤旗もあやまちをただした。
地元中国新聞はまだ「イスラム国」のままだ。


◆ アオサギ(コウノトリ目サギ種アオサギ属) ◆
アオサギ 2013.11.23撮影
サクラの紅葉を背景に電線(光ファイバー線?)で休憩中のアオサギ。

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